JR貨物・犬飼社長
「運賃改定、ネットワーク維持のため理解を」

来年4月に9%引き上げ


2025.10.29 15:00
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犬飼社長(右)と麦谷執行役員

カーゴニュース 2025年10月28日 第5382号
 
 JR貨物(本社・東京都港区、犬飼新社長)は17日、2026年4月から鉄道の基本運賃を9%(コンテナ、車扱とも)引き上げると発表した(一部既報)。22日に行われた会見で犬飼社長は「物価上昇基調が続くなかで、原料費や燃料費、人件費など当社だけでは賄いきれないコスト増嵩が続いている。お客様にとってコストインパクトになることは確かだが、貨物鉄道ネットワークを維持することは、『2024年問題』やトラックドライバー不足が進むなかで、お客様のメリットにもつながっていく」と述べ、運賃改定に理解を求めた。

JR貨物発足以来、3度目の値上げに

 今回の運賃改定は、24年4月に実施した改定(改定率6%、コンテナ、車扱とも)に続き2年ぶりとなり、JR貨物発足以降では、1810月に実施した最初の改定(改定率10%、コンテナ、車扱とも)を含め3回目。

 JR貨物発足当時の運賃を「100」とした場合、都合3回の改定により基本運賃は「127」まで高まったことになる。また改定までに要した期間は、1回目から2回目までが5年半、今回が2年と短くなっている。

 犬飼社長は、9%という改定率について「自社でコントロールが難しいコストアップ分に加え、貨物鉄道を維持するための投資や人材確保も必要になる。そうした費用を計算した結果、9%という改定率になった。お客様への説明はこれからだが、貨物鉄道を維持することのメリットを丁寧に説明していきたい」と強調。また、今後の運賃改定の方向性については「今後も物価上昇基調は続くと思われるが、毎年のように上げていくというスタンスではない。当然、自助努力をしつつ、それでもコスト面で厳しい状況になれば、どこかのタイミングでお願いすることはあり得る」と述べた。

上半期のコンテナ輸送実績は7・5%増に

 会見では、9月の輸送実績についても発表。これによると、コンテナは前年同月比14・7%増の165万5000t、車扱が1・1%増の64万2000tとなり、合計では10・6%増の229万8000tとなった。昨年にあった台風10号による輸送障害の影響に加え、輪軸不正行為による輸送量減少からの反動もあり、コンテナ実績は2ケタの高い伸びを示した。

 コンテナ品目別では、リニア中央新幹線建設工事に伴う発生土運搬でエコ関連物資が引き続き高い伸びを続けているほか、食料工業品は一部顧客の鉄道シフトにより清涼飲料水を中心に増送となった。また、積合せ貨物は反動増もあり、9・3%増と前年を大きく上回った。

 車扱は、ガソリンおよび軽油が堅調な荷動きとなったことで、全体でも前年実績を上回った。

 今年度上期(4~9月)の輸送実績は、コンテナが前年同期比7・5%増の943万9000t、車扱が3・4%減の364万7000tとなり、合計では4・2%増の1308万6000tで、前年実績を上回った。コンテナはリニア中央新幹線工事の発生土輸送が数字を押し上げたほか、積合せ貨物はドライバー不足を見越した鉄道シフトにより3・8%増となった。また、自動車部品も一部顧客の増送により15・4%増と高い伸びを見せた。

 犬飼社長は、上期の輸送実績について「コンテナは高い伸び率となったが、エコ関連物資が輸送量を持ち上げている面があり、食料工業品、化学関係などの主力品目の需要が底堅いかといわれるとまだまだという状況だ。『2024年問題』や環境問題を踏まえると、期待ほどには伸びておらず、当社の努力が足りていない。もっと鉄道利用が増えていけるよう、下期以降に各施策に取り組んでいく」と表明。

 会見に同席した麦谷泰秀執行役員営業部長は「31ft大型コンテナの増備が進んでいるほか、従来は鉄道の競争力が弱いと言われていた中距離帯での輸送需要が高まっている。これまでの取り組みに加えて、こうした取り組みをプラスαにしていく」と説明した。


9月の品目別輸送実績

 

 

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