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CONCIERGE COLUMN

通運(つううん)って
知っていますか? ➁

さて、終戦から5年後の昭和25年(1950年)は、特需ブームを契機に経済が息を吹き返し、ようやく日本が立ち直り始めた時代です。

その頃の通運業界というと、1駅1店制が敷かれ、日本通運株式会社と集約統合に反対したいくつかの地区統合会社に集約されていました。前回で触れましたが、信用や資力のない小事業者の増加に対する独占的法律(小運送業法と日本通運株式会社法)が、その要因です。
(鉄道輸送の駅から駅を「大運送業」、その端末の駅から荷主の戸口まで運ぶことを「小運送業」と言われていました。)

その後、国の経済再建策が進められ、民主化の動きも活発となり、日本通運株式会社を中核とする1駅1店制には批判が集中。公正競争を前提とした小運送複数化への運動が波及していきます。

そして、過度の集中防止、自由競争の促進のため、小運送業法と日本通運株式会社法が廃止され、主要駅を対象として、小運送業の複数化方策である「通運事業法」が施行されることになり、自由公正な競争体制のもとで新しいスタートを切ることになります。

通運事業法は、独占を排し、一般の運送業者に解放されたものの業務内容の公共性を考え、適正な規制を加えるために免許制がとられました。過去の反省から信用や資力のない小事業者の増加による混乱を考慮したのでしょう。

通運事業を始めようとするものは、運輸大臣(現在の国土交通省大臣)から免許を受けなければならず(現在は許可制)、運賃料金の制定・変更についても認可(現在は届出制)を受ける必要があり、実際には、誰でも自由に通運事業をはじめることはできなかったのです。

また、免許を取得しても「開業」することは難しく、新規免許事業者161社に対して、開業に至ったのは、その半数の81事業者に留まりました。実際、開業してみたものの、通運事業の本質に詳しくなかったことが影響し、倒産する会社も続出、経営者も頻繁に変わっていくこととなります。

ちなみに、当時、全国一の貨物取扱額を誇った大阪梅田駅には、通運事業新規免許の申請が殺到したようです。その1社である当社の前身、大阪合同運送株式会社の創立時の記録をみてみると、「生まれ変わったばかりの通運事業が一体どんな仕事なのか、だれも知るものはいない。発送を依頼してくる荷主は皆無。新免の大阪合同ですが、と荷主さんに言うと、“うちの荷物は鉄道便ですからマル通です。シンメンとは関係ありません”と荷主はいう。偉い人に面会し、法律を説明して初めて荷物を手にした。新免業界の夜明けは、闇夜の物語りさ。」と記されています。

「新免(シンメン)」とは、先述の新規事業免許者のことを指しており、開業から3年程度の創成期は、当時の記録からも、本当に苦難の時代だったということがわかります。

その苦難の中、全国の新免事業者は、同業者間で励まし合いながら結束し、次第に組織化の機運が高まっていきました。そして、新免だけの全国組織を確立して業界を発展させたいと、陸運局の承認を得て組織されたのが「全国通運業連合会」という任意の団体です。

現在では、全国通運系(全国通運業連合会に加盟する)通運事業者は241の貨物駅に対して約260社、ほぼすべての貨物駅に数社が出店営業しています。
さて、わたしたち全国通運系の通運事業者は、地域に根差し、その地域の貨物駅に出店しています。当初は1駅1業者の免許基準を建前にしていたこと、出店時の経営環境の厳しさから、基本的には全国展開はしていません。例えば、A地域からB地域への鉄道貨物輸送では、貨物を集荷し鉄道に載せる手続きを行う事業者と、鉄道到着後に配達する事業者は、それぞれの地域の事業者が対応することになります。全国通運(*全通:ゼンツウとも呼びます)系事業者は、1社で鉄道貨物輸送を完了させるのではなく、加盟している通運会社との意思疎通・事業連携により、お客様の荷物を戸口から戸口へお届けしているということになります。

そのため、全通系の通運事業者は、定期的な会合や訪問を通じて情報交換を行い、意見を交わしやすい関係を築いています。各社は、ライバルであり、仲間でもあり、ひいては友達以上恋人未満みたいな関係…といえるかもしれませんね(笑)。

では、すべての輸送が全通系事業者間の取引なのか?というと違います。事業者の輸送力や貨物駅の特性、お客様からのご希望に応じて日本通運様や地区通運系事業者(旧免事業者)とも協業していますし、所属団体の枠を超えた良い関係を築いています。業界の発展のためには当然のことですよね。

参考までに、業界内シェアをみてみましょう。JR貨物様のニュースリリースによると、2021年8月のコンテナ取扱数量は114万トンです。5tコンテナに置き換えると約20万個になります。鉄道貨物輸送の業界内のシェアは、全国通運系通運事業者が約40%、日本通運様が約40%、地区通運系事業者など他通運事業者が約20%といわれていますので、月に約8万個を全国通運系事業者が取り扱っていることになりますね。(あくまでイメージです)

ちなみに、各貨物駅を代表するような新免事業者で、比較的規模の大きな駅を代表するような会社は「マル運」称号の新免事業者と言われていました。なぜマル運なのか?おそらく、日本通運が「マル通」と言われていたことに対して、そう呼ばれていたのではないかと思います。(今でもたまに「大阪のマル運さん」とお声がけいただくことがあります。その時は、業界と会社の歴史を感じて背筋が伸びますね。)

前回と今回は、通運業界の成り立ちについて整理してきました。次回は「大阪のマル運」である当社の歴史について、ご紹介してみようと思います。

最後までお付き合いありがとうございました。

*参考文献
熊木茂夫『通運事業の歴史』(2016年) 通運情報社
『流通設計21』(2003年6月号) 輸送経済新聞社
『モーダルシフト促進のための基礎研修テキスト』(令和2年11月改訂版)公益社団法人全国通運連盟
『合通50年のあゆみ』(2000年)

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