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2019年10月21日

【流 通】東芝 鉄道会社向け列車遅延リスク評価アルゴリズム開発


東芝は鉄道会社がダイヤ作成の際に活用できる、大規模・過密な鉄道ダイヤの全ての列車の遅延確率を高速かつ正確に算出する列車遅延リスク評価技術を開発した。列車遅延リスクを低減することが可能となり、鉄道会社の経営効率の改善につながる運行計画の作成を実現する。遅延リスクの低減は乗客の利便性を高め、鉄道利用における総合的な顧客満足度の向上に貢献する。

鉄道の遅延は目的地への遅れだけでなく駅での混乱につながり、乗客の利便性・満足度低下の大きな要因となっている。日本の鉄道・バス利用者が感じる不満要因(※1)は「運行本数が少ない」(32.3%)に次いで、「遅延する」(17.7%)は第2位に挙げられている。特に後続列車への遅延波及が累積して生じる2次遅延が問題となっており、ラッシュ時には、特に乗降客が集中する駅での混乱につながる。大きな2次遅延は稀にしか発生しないものの一度発生するとダイヤが大きく乱れるため、列車遅延リスクを予め正確に評価・予測し、ダイヤ通りに運行することは重要な課題となっている。

従来は遅延シナリオを想定して、何度もシミュレーションを繰り返して2次遅延評価を行う技術が主流でした。しかし、稀にしか発生しない大きな2次遅延を正確に評価するためには膨大なシミュレーションが必要となり、鉄道会社の時間・費用負担が重くなっていました。一例として0.01%の確率で発生する事象の再現には、少なくとも数万回程度のモンテカルロシミュレーション(※2)が必要になる。

東芝は膨大なシミュレーションを行わなくても、高速かつ正確に列車の遅延確率を算出できる列車遅延リスク評価アルゴリズムを開発した。このアルゴリズムは実際の運行パターンやダイヤの発着時刻の情報を元に確率伝搬モデル(※3)を作成し、実際の運行実績を学習させることで2次遅延確率の計算精度を向上させることができる。さらに2次遅延確率の値を、確率伝搬モデルに基づく数式から導出しているため、モンテカルロシミュレーションで必要とされる膨大なシミュレーションを行わずに2次遅延確率を計算することができる。

今回開発したアルゴリズムを用いることで、実際のダイヤをはじめさまざまなダイヤ候補ごとに、各列車の各駅での2次遅延確率や遅延時間を見積もり、列車遅延リスクを高速かつ適切に評価することができる。列車遅延リスクを織り込んだダイヤを作成することで、ダイヤの乱れを削減することが期待できる。なお、同技術は2019年9月に東芝デジタル&コンサルティング株式会社が英国で進めているコンサルティング事業(※4)に採用されました。

※1 鉄道・バスを利用する方が感じる不満要因
内閣府「公共交通に関する世論調査」(平成28年度)

※2 モンテカルロシミュレーション
シミュレーション対象の現象に対して、その入力に乱数を与えて出力値を観測する手法。

※3 確率伝搬モデル
各列車の発・着・通過の事象と、その間の遅延の波及関係をネットワークで表し、各駅の2次遅延確率をネットワークに沿って計算するモデル

※4 東芝デジタル&コンサルティングが英国で進めているコンサルティング事業。東芝デジタル&コンサルティングCPS技術を活用した鉄道運行計画作成の取組開始で合意した

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:40| 流通