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2019年01月24日

【流 通】理化学研究所 がんを攻撃する魚雷型ナノカプセルを開発


理化学研究所(理研)開拓研究本部伊藤ナノ医工学研究室の上田一樹研究員、伊藤嘉浩主任研究員らの研究グループは、両親媒性ポリペプチド(※1)でナノサイズの筒状構造体を作製し、その中に抗がん剤を入れ、筒の両端を半球でキャップした「魚雷型ナノカプセル」を開発した。研究成果は、がん治療をはじめとするさまざまな薬剤体内輸送用カプセルや細胞内への核酸輸送用カプセルとしての応用が期待される。

アスペクト比(※2)を持ったロッド状材料は、高い血中滞留性や細胞内輸送性、細胞内でのエンドソーム(※3)脱出性を示すことなどが報告されており、ロッド状のカプセル開発が期待されていた。しかし、ナノサイズでロッド状の中空構造体を作ることは困難であり、これまで達成されていなかった。

今回、研究グループは両親媒性ポリペプチドで形成される筒状構造体の存在下で、球状構造体を作る両親媒性ポリペプチドを自己集合化させることで、ロッド状の魚雷型ナノカプセルの作製に成功した。サイズは筒状構造体と球状構造体に由来しており、筒状構造体の部分は加熱によって伸長させることができ、さまざまな長さのナノカプセルを調製できる。また、この魚雷型ナノカプセルは球状カプセルと比較して、細胞内に素早く多量に取り込まれやすいことを示した。さらに、抗がん剤を内包して担がんマウスに注射することで、腫瘍患部へ素早く薬剤を輸送し、抗がん効果を発揮させることにも成功した。


※1 両親媒性ポリペプチド
親水性と疎水性を示す部位を持つポリマー分子であり、水中において疎水性相互作用により分子集合体を形成する。この研究では親水部に26量体のポリサルコシン、疎水部にLロイシンとアミノイソ酪酸の交互配列12量体からなる両親媒性ポリペプチドを合成して用いている

※2 アスペクト比
一般的には長方形の長辺と短辺の比率のことをいう。本研究の魚雷ナノカプセルについては、カプセルの直径と長さの比を指す

3. エンドソーム
細胞小器官の一つ。細胞内に取り込まれた物質の輸送や代謝に関与する袋状の構造体

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投稿者:gotsuat 09:40| 流通