<< 前のエントリ合通ロジのトップページへ次のエントリ >>
2017年12月13日

【環 境】食糧と競合しないバイオマス原料から液体燃料生成に成功


昭和シェル石油と東北大学大学院工学研究科冨重圭一教授の研究グループは、共同研究により、食糧と競合しないバイオマス原料から、ガソリン基材として利用可能なヘキセンの生成に成功した。この技術を平成37(2025)年までに確立する事により、温暖化対策への貢献を目指す。ヘキセンはジェット燃料相当の炭化水素に変換(※)可能な事から、ジェット燃料基材の製造にも展開していく予定である。

世界では持続可能な社会の構築に向け、温暖化対策として二酸化炭素削減などの議論が進められている。バイオ燃料は、燃焼しても大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えない(カーボンニュートラル)とされており、同社はエネルギー会社としての未来を見据え、食糧と競合しない草本系及び木質系バイオマスを原料とした次世代バイオ燃料を製造する触媒の開発を東北大学と共同で行ってきた。

同社は、食糧と競合しないバイオマス由来のセルロース、もしくはそれらを糖化/水素化処理として得られるソルビトールを原料として、東北大学が開発したIr-ReOx/SiO2触媒(以下:触媒@)、もしくは東北大学との共同研究により開発したPt-Ir-ReOx/SiO2触媒(以下:触媒A)を用いて、原料中のC-O結合を水素で分解し、ヘキサノールを製造する技術開発を行っている。この生成したヘキサノールをH-ZSM-5触媒を用いて脱水反応させる事により、ガソリン基材として利用可能なヘキセンが得られる。

さらに、共同研究により開発した触媒Aは、原料のソルビトールから直接水素を取り出しての利用が可能である。同社は、反応に用いる水素において、ソルビトール由来の水素を一部使用して、天然ガスなどの化石燃料から製造されるGHG排出量の多い水素の使用量を減らす事で、従来の石油由来のガソリンに対してGHG削減効果が50%以上のバイオ燃料の研究開発に取り組んでいる。

ラボレベルでの実験により、セルロース(0.5g)を原料に、触媒@にてヘキサノールの生成(収率60%)に成功した。また、H-ZSM-5触媒を用いてヘキサノールの脱水反応によるヘキセンの生成(収率79.8%)に成功した。

ヘキセンは石油由来のガソリン中に存在する成分であり、今回生成したヘキセンに関して夏季及び冬季の代表的なガソリンへの混合可能量をJIS規格に照らして調査したところ、夏季及び冬季で、それぞれ、約22Vol%及び約7 Vol%混合可能である事を確認した。日本ではバイオエタノールのガソリンへの混合率は、JIS規格で3 Vol%が上限(E10対応ガソリン車は10 Vol%)となっているため、バイオエタノールに比べ、より多くガソリンに混合できるという利点がある。

現在はラボレベルにて同触媒変換技術のプロセスを開発中であり、今後は段階的なスケールアップを経て、平成37(2025)年までに技術を確立する事により、持続可能な社会の実現を目指す。

※ ヘキセンを酸触媒により二量化後、残された二重結合を水素化反応させる変換法

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:25| 企業の取り組み【機関】