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2015年01月14日

【流 通】関西大学と帝人、動きを生地でデータ化するウエアラブルセンサー圧電ファブリックを開発


関西大学システム理工学部の田實 佳郎教授と帝人は、世界で初めて、ポリ乳酸繊維と炭素繊維を使用した圧電ファブリックを開発した。

圧電体は、圧力を加えると電気エネルギーを発生し、逆に電気エネルギーを加えると伸縮する特性を有する物質の総称で、その特性を利用し、スイッチなどのセンサーやスピーカーなどのアクチュエーター(駆動体)として使用されている。圧電体としては、一般的にPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)が用いられているが、セラミックであることによる柔軟性や透明性の欠如や、鉛を使用していることによる用途の限定などが課題となっている。また、有機物であるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)が圧電体として用いられることもあり、電界配向(ポーリング)処理が必要であることから工業的な生産が難しいとされ、温度変化により電位が発生する性質(焦電性)を有していることから用途が限定されるという課題があった。

こうした中、関西大学と帝人は2012年に、ポリL乳酸とポリD乳酸を積層させることで強力な圧電性能を発揮し、柔軟性や透明性も有する圧電フィルムを共同開発し、現在、市場開拓を進めているが、このたびその技術の応用により、繊維を用いた「圧電ファブリック」という全く新しいコンセプトのウエアラブルデバイスの開発に成功した。

共同開発した圧電ファブリックは、圧電体にポリL乳酸繊維、電極に炭素繊維を使用することにより、センサーやアクチュエーターへの使用を可能としたファブリックで、「平織」「綾織」「サテン」の3タイプを開発した。平織タイプは「曲げ」を感知することができ、サテンは「ねじり」、綾織は「曲げ」「ねじり」に加え、「ずり」や3次元方向を感知することができる。

田實教授の指導の下、福井県工業技術センターの協力を得て開発したこの3タイプのファブリックは、その織り方や編み方の種類は数百にも及ぶことから、変位や感知したい方向に合わせた圧電ファブリックの設計が可能となる。

今後、関西大学と帝人は、織り・編みによる最適なファブリックの設計に取り組み、これまで不可能であった「着用するだけで精緻な動きのデータ化」の実現を目指す。そして、それを基に手術や介護などの遠隔医療や、伝統工芸などの職人技の可視化、さらに宇宙開発に至るまで、「人の動きを精緻に再現する」ことにより、これまで成し得なかったセンシング技術を確立し、インターネット上でモノをコントロールするIoT(Internet ofThings)社会の進化に貢献する。

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:36| 流通