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2011年05月16日

【流通】稼働中の煙突内部の撮影・診断できる煙突内部撮影装置を開発

新日本製鐵と奥村組は、稼働中の煙突の内部を撮影できる耐熱性に優れた「煙突内部撮影装置」を開発し、製鐵所構内の稼働中の煙突に実適用した。

鉄筋コンクリート造の煙突は、コンクリートを熱風から保護するため、内側に耐火レンガ層が設けられている。この耐火レンガ層は150℃〜250℃の熱風に直接触れるため、目地の亀裂やレンガの剥脱等の損傷を受けやすく、そのまま放置すればコンクリートが直接熱風に晒されて、強度の低下やひび割れ、鉄筋の腐食により地震や台風時には大きな被害が発生することが考えられる。このため、定期的に耐火レンガ層の劣化状況を診断し、適宜改修を行う必要がある。

この診断は、耐火レンガ層を直接観察することが最も効果的な手段となる。従来、対象となる煙突の稼働を停止し、煙突内部の温度が下がった時点でテレビカメラを挿入して耐火レンガ層の内壁面を撮影することにより観察を行っているが、この期間、施設の稼働を停止しなければならないため非効率であるばかりではなく、停止できない施設においては外側から間接的に診断する方法の選択を余儀なくされている。このような背景のもと、煙突の稼動を停止させることなく、高温状態の煙突の内部診断を正確にかつ能率よく行える煙突内部撮影装置を開発し、製鐵所構内で稼働中の煙突の内部診断に実適用し、煙突内の耐火レンガ層の状態を鮮明に視認することができた。

今回開発した煙突内部撮影装置は、真空二重筒構造の耐熱ケース内にテレビカメラ、パソコン、無線通信装置、温度センサー、方位計、バッテリー、冷却剤を内蔵するとともに、耐熱ケースには煙突内の全周を視認できるよう6ヶ所に耐熱ガラス製の撮影窓を設置することで、高温度域における適用を可能とした。同装置(重量が約200kg)をクレーンで煙突頂部から吊り込み、煙突内を昇降させながら内壁の状態を撮影記録する。テレビカメラとして6台のハイビジョンカメラを搭載しており、撮影窓から同時に6方向を鮮明な画像で撮影する。テレビカメラによる撮影に合わせ、その撮影方向と撮影高さのデータも連続して記録する。

テレビカメラの撮影方向を検知する方位計としては、信頼性の高い光ファイバージャイロを採用した。撮影高さの検知は、クレーンに外付けした専用の計測器により行う。この撮影高さの計測器は、吊りワイヤーと接触する滑車の回転数をロータリーエンコーダーで検出することにより吊りワイヤーの繰出し長さを計測するもので、正確かつ確実に撮影高さを検知することができる。

同装置は、今回実適用した鉄筋コンクリート造煙突のみならず、内部に防蝕材がライニングされている鋼製煙突の内部撮影にも適用できる。同装置の鮮明な映像を基にした詳細な診断に基づき効果的な対策を施すことで、煙突を含む設備の長寿命化や維持更新に要する費用(ライフサイクルコスト)のミニマム化を図ることが可能で、さらに、長期的にはスクラップビルドの頻度の縮減にもつながり、廃棄物(スクラップ)の発生量を抑制し環境負荷の低減効果を期待することもできる。今後は、製鐵所構内の各種煙突に本装置を広く利用していくとともに、他の各種プラントやごみ焼却場の煙突などにも展開を図り、煙突のリニューアルの端緒となる技術として積極的に活用していきたいとしている。

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投稿者:gotsuat 09:40| 流通