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2010年02月03日

【流通】水だけで洗浄する工業・産業プロセス向けの洗浄技術開発

--- 静岡大学 真田助教が開発 薬液を使用しない低環境負荷型の洗浄技術 ---

NEDOの産業技術研究助成事業の一環として、静岡大学工学部機械工学科の真田俊之助教は、薬液を一切使わずに水だけで洗浄する工業・産業プロセス向けの新しい枚葉式(※1)洗浄技術を開発した。水蒸気と水を混合噴射させる手法で、蒸気がもつ凝縮効果により、濡れにくい極微細な表面でも効果的に洗浄できる。ノズル形状や設計を工夫し蒸気の噴流を制御することで、非常に細かなパターン内やナノスケールのパーティクル(※2)など、対象物を傷つけることなく効率良く除去でき、再現性にも優れている。半導体デバイスやプリント基板、光学レンズ、大型ガラスの洗浄用途のほか、医療器具や食品、一般家庭での洗浄など、洗浄にかかるあらゆる分野で応用が期待される。

半導体デバイス製造工程では、デバイスの微細化、新規材料・プロセスの導入、地球規模の環境問題などから、従来の一括型大量洗浄で使用する薬液使用量を減らし、再現性の高い洗浄技術が求められている。従来の半導体製造工程における洗浄技術としては、アンモニア水、塩酸、過酸化水素水を洗浄液として使うRCA 洗浄技術が最も一般的だが、大量のウェハーを同時処理するため、異物の再付着など洗浄による再汚染や、微細化の進んだ最先端の半導体デバイスでの洗浄力不足、再現性の低下、洗浄後の廃水や廃液が多い、などの問題がありました。一方、産業分野で実用化が始まった空気と水(薬液)の混合噴流による洗浄では、高圧空気を使用するため対象物で発生するダメージや、それでも除去できない局所での洗浄などの問題があった。

そこで、静岡大学工学部機械工学科では、空気の代わりに凝縮効果の高い水蒸気に着目し、水蒸気と水を混合噴射させる洗浄技術を開発した。水だけを使用したこれまでの他技術と比べ、低圧にも関わらず桁違いに優れた洗浄能力(ナノスケールでのパーティクル除去)を実現している。また、フォトレジストやパーティクルの洗浄を同時に行うことができるため、スループットを大幅に向上させることが可能となった。ポリマー洗浄で薬液が必要な場合でも、適度な物理力と効率良く薬液を浸透させるため、極微量の薬液(数百ppm程度)の投入で十分な洗浄効果が得られ、他の洗浄技術と比べて大幅な環境負荷の低減となる。

今後、静岡大学では、新規材料や新規プロセスへの適応性(洗浄対象物のダメージなど)や様々なサンプルに対する洗浄能力評価を行っていく。あわせて、クリーンな水蒸気の更なる作製コスト低減を図り、早期の実用化を目指す。特に、半導体以外の分野でどの程度の適用可能性があるのか、またどのようなニーズがあるのかなども含め、薬液を使用できない(もしくは使用量を極力減らしたい)との要望を持つ企業や組織などと意見交換や共同開発を提案する。

※1:枚葉式
半導体製造装置などにおいて、シリコンウェハーを一枚ずつ洗浄処理する方式
従来の半導体製造工程では何十枚ものシリコンウェハーに対して一括して洗浄を行う方式が主流だったが、近年はウェハーの大口径化や製造処理の微細化・高精度化に伴って枚葉型の製造工程が増加しつつある

※2:パーティクル(particle)
チリやホコリなど微細な粒子状の異物
半導体製造工程(特に、シリコンウェハーに集積回路を製造する前処理工程)では不良品が発生する原因となる

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 10:03| 流通