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2010年01月29日

【流通】粘菌の輸送ネットワークから都市構造の設計理論を構築

--- 都市間を結ぶ最適な道路・鉄道網の法則確立に期待 ---

科学技術振興機構(略称:JST)目的基礎研究事業の一環として、JST さきがけ研究者の手老 篤史 研究員らは、単細胞生物の真正粘菌が形成する餌の輸送ネットワークを理論的に解明し、都市を結ぶ実際の鉄道網よりも経済性の高いネットワークを形成する理論モデルの構築に成功した。この研究の成果であるネットワーク形成に関する理論は、近年ますます複雑化するネットワーク社会において、経済性および災害リスクなどの観点から最適な都市間ネットワークを設計する手法の確立につながる。

真正粘菌は、何億年もの長きにわたって厳しい自然淘汰を乗り越えて生存し続けている。このため、さまざまな機能をバランスよく保ち、変化する環境にも柔軟に対応することが知られている。すなわち、頻繁に使用される器官は増強され、使用されていない器官は退化している。これは、人間が作る都市間ネットワークの思想と共通する部分が多いと言える。粘菌のこのような知的な挙動に関しては、すでに手老研究員らから発表され、2008年度のイグ・ノーベル賞を受賞している。しかし、脳も神経もない粘菌が知的なネットワークを形成するメカニズムについては理論的な解明がなされておらず、生物学上の謎の1つとなっていた。

今回、真正粘菌変形体が作る輸送ネットワークを実験・理論の両面から解析し、数理科学的にネットワークを再現する理論モデルを構築した。これにより、粘菌の作るネットワークによる物質輸送は、実際の鉄道ネットワークより輸送効率が良いことや、アクシデントに強いことが分かった。

今後、都市間を結ぶ道路・鉄道・インターネットなどによる物流・情報ネットワークの整備にあたり、建設・維持コストや災害リスク管理など、さまざまな要件を目的に応じて重視した際に、この研究により構築した理論モデルの適応により最適なネットワークを提示する設計法則の確立が期待される。

この研究は、北海道大学電子科学研究所の中垣 俊之 准教授、広島大学大学院理学研究科の小林 亮 教授らと共同で行われ、研究成果は、2010年1月22日(米国東部時間)発行の米国科学雑誌「Science」に掲載される。

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投稿者:gotsuat 09:23| 流通