<< 前のエントリ合通ロジのトップページへ次のエントリ >>
2021年09月03日

【流 通】極地研と竹中工務店、炭素繊維強化プラスチックを南極の観測施設に活用


極地研究所と竹中工務店は2022年度より、南極内陸部のドームふじ近傍に、屋根の骨組み(架構)に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を活用する氷床掘削施設を設置して効果の検証を開始する。

現在策定中の南極地域観測第X期6か年計画(2022年度〜2027年度)において、南極内陸部(沿岸から約1,000km)のドームふじ近傍での氷床コア(アイスコア)掘削(※)が予定されている。

掘削施設の建設に必要な部材は、南極観測船「しらせ」で日本から南極大陸沿岸の昭和基地へ輸送し、その後、昭和基地からドームふじへ雪上車で数週間かけて運搬する必要がある。また現地での組立は、限られた人数の観測隊員により進められる。これらから建物の強度を維持しつつも、輸送や組立の効率化のために部材の軽量化を図ることが重要な課題となっていた。さらに現地は年平均気温がマイナス50℃を下回る厳しい気象環境にあり、部材に使用される素材は低温に強いことが必須とされている。

この課題の解決を図るため極地研究所と竹中工務店は、CFRPの軽量、高強度、伸び・縮み・変形しにくい、錆びないなどの特長を活かし、輸送にかかるエネルギーの削減、現地での組立の簡易さ、現地の過酷な気象環境への対応といった観点から、南極の内陸施設におけるCFRPの活用に向けた共同研究を2019年から進めてきた。

実証試験では南極のドームふじ近傍に設置する掘削施設の屋根架構にCFRP素材の部材を適用し、部材軽量化による効果を検証するもので、2021年12月に昭和基地まで輸送した後、2022年度にドームふじ近傍の掘削地点に設置し、その後2028年まで現地で経過観察を行う予定にしている。


※ 氷床掘削
南極大陸を厚く覆っている氷は、雪が押し固められてできているため、過去の環境や空気が連続的に保存されている。氷床掘削は氷床を円筒状に掘削して取り出した「氷床コア(アイスコア」を解析することによって、過去の地球環境を調べる。

これまでにドームふじで2度にわたり氷床コアの掘削が実施された(1995〜96年、2003〜07年)。これにより過去72万年間の古環境が復元され、10万年周期で繰り返す 氷期−間氷期サイクルの実態や、その機構が明らかになりつつある。

今後、さらなる気候・氷床変動メカニズムの理解や将来予測の高精度化を進めるには、およそ100万年前頃に起こったとされる、氷期−間氷期周期の移行卓越周期4万年から10 万年への移行)の時期の古環境を氷床コアから復元することが求められている。そのため、国際的な研究組織によって、南極域で複数の100万年を超える氷床コアを採取することを目指した「Oldest Ice」計画が開始された。日本は南極観測第]期6か年計画 の中で、100万年を超える最古級のアイスコア掘削に挑む予定になっている。

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:40| 流通