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2021年06月09日

【アジア】日立製作所 タイの電力需給最適化に向けた実証プロジェクトのベンダーに


日立製作所とタイの同社現地法人 日立アジア(タイランド)社は、タイ政府が主導するエネルギー政策の包括計画Smart Grid Development Master Plan(※1)に基づきタイ王国発電公社(Electricity Generating Authority of Thailand/以下 EGAT)が推進する、電力需給バランスの最適化に向けた制度設計・実用化を検討するデマンドレスポンス(※2 以下 DR)実証プロジェクトで、EGAT向けDR管理システムDRMS(※3 Demand Response Management System)のシステムベンダーに決定した。

この実証プロジェクトはタイで最も古い歴史をもつ国立大学であるチュラロンコン大学が、DRの制度設計をはじめ中心的に進めており、送配電設備を効率よく運用することにより再生可能エネルギーの系統容量の拡大を実現する、スマートグリッド(※4)システムの構築に向けた取り組みの一環として実施される。

現在、タイ国内における主要電源は火力発電所であることから、タイのエネルギー省では、地球温暖化を背景に、2019年に出された2018年〜2037年を対象とするタイ電源開発計画(※5 Power Development Plan(PDP)2018)において、温室効果ガス排出削減などの環境負荷の低減を考えた電源構成の実現を掲げている。天然ガスへの依存度はほぼ維持し、石炭火力への依存度を1割程度に引き下げ、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーを積極的に導入する方針などが示されている。

今後、再生可能エネルギーの拡充に伴い、天候などによって急変する電力需要に対応するための系統運用の難しさが顕在化し、スマートグリッドシステムのような需給バランスを保つための系統安定化対策の重要性がこれまで以上に高まることが予想される。

長年、日立製作所は、DR技術の萌芽期から、国内外において複数の実証プロジェクトに取り組み、その技術と知見・ノウハウを蓄積してきた。米国・ハワイ州での再生エネルギー導入に向けたスマートグリッド実証事業や、国内では、経済産業省が主導したバーチャルパワープラント(※6 以下 VPP)構築実証事業(2016年〜2020年 ※7)において、日本の制度設計に対応しDRやVPPの技術・システムの標準化を推進してきた早稲田大学や電力各社の送配電事業部門との実証プロジェクトに取り組んできた。

今回、タイでの実証においては、これまで日立製作所が培った技術やノウハウをもとに、同社のDR/VPPソリューションである「CURSUS−VPP」を活用する。再生可能エネルギーをはじめとした複数の分散電源をあたかも1つのVPP(仮想発電所)のように統合的に管理できるシステムを提供する。

※1 Smart Grid Development Master Plan
タイのスマートグリッド開発における政策・対策の導入計画を4つのステージに分けて定義したもの。この計画が定める具体的な活動内容には、エネルギー管理システム、デマンドレスポンス、エネルギー貯蔵、気象予測といった、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの出力変動対策が含まれている。

※2 デマンドレスポンス(DR)
電気事業者等の電力供給側が、供給量に合わせて需要家側(各家庭や企業)の消費電力を抑制できるように、電力料金やインセンティブ条件を掲げて、電力消費の抑制や制御を行うこと。需要家側が、供給者側からの要請に応じることから「デマンドレスポンス(需要応答)」と呼ばれる。

※3 DRMS
Demand Response Management System
デマンドレスポンスの発動を管理するシステム

※4 スマートグリッド
ITや制御技術を用い、電力需要と電力供給をリアルタイムに一致させる先進的な電力網
※5 Power Development Plan 2018
国家の経済成長予測に合わせた電力需要予測や調達燃料の多様化政策などの発電に関する計画

※6 バーチャルパワープラント(VPP)
太陽光発電などの再生可能エネルギーや蓄電池、電気自動車(EV)などのエネルギーリソースを、IoT 技術を用いて、あたかも一つの発電所のように制御する技術

※7 「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金」として、経済産業省がVPPの構築に係る実証事業を行う経費に対して当該費用の一部を助成するもの

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:30| アジア