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2020年07月13日

【アジア】北海道大学・東北大学 ミャンマーと超小型衛星開発

北海道大学、東北大学とミャンマー航空宇宙技術大学(MAEU)は、ミャンマー初となる人工衛星の開発プログラムを開始した。5年間でミャンマーからの留学生に対し衛星開発のキャパシティビルディングを実施しながら、50kg級の超小型衛星2機の開発と打ち上げを行う。

北海道大学・東北大学のグループは2015年より、フィリピンから大学院生を受け入れて同国が開発する1号及び2号衛星の製作、打ち上げ及び運用を協力してきた(PHLMicrosatプログラム)。この成功が契機となって、2019年にはフィリピンに宇宙庁(PhilSA)が設立され、初代長官(閣僚)にフィリピン側のプログラム責任者であったフィリピン大学ディリマン校のジョエル ジョセフ ジュニア サクロ マルチアーノ教授が就任した。

こうした衛星開発・キャパシティビルディングプログラムは、北海道大学・東北大学が主導する衛星技術やデータを共有し、将来は国境を越えた衛星の相互運用を目指す、アジア9カ国16機関が参画するアジア・マイクロサテライト・コンソーシアム(AMC)の活動の一部でもある。

今回ミャンマーと実施するプログラムはPHL−Microsatプログラムと同様に、5年間で2機の地球観測用超小型衛星の開発と打ち上げのほか、衛星に搭載されたマルチスペクトルカメラなど先端的観測装置の効果的な運用とデータ利用を目的としている。プログラムの予算(約17億円)はミャンマー連邦共和国政府が負担し、北海道大学、東北大学及びミャンマー航空宇宙技術大学(MAEU)の密接な協力により研究・開発・運用が推進される。日本の両大学は、ミャンマー側のスタッフ・学生(第1期は7名)を大学院の学生として受け入れ、教育・人材育成をしながら計画の立案から衛星開発・製作、運用、解析を共に行う。1号機は2021年早期に国際宇宙ステーションからの放出を目指す。衛星には数種類のカメラが搭載され、特に超多波長スペクトルイメージャー(SMI)とよばれる装置は、全ての衛星の中で最多の波長選択性を持ち、植生や海洋の状態を従来よりもはるかに高い精度で計測できる。その機能を活かし、ミャンマーの農林水産業に貢献することが期待されている。また短時間で正確に、目標物にカメラの視野を向ける技術を使い、世界で最も高精度な雲の立体撮影を行い、集中豪雨や台風の監視と予測に貢献する。

北海道大学・東北大学のグループは、50kg級の超小型衛星5機の開発・打ち上げと地球観測に成功しており、これは数、成功率共に日本国内の大学・企業でもトップクラスで、AMCの活動として超小型衛星を用いた国際共同ネットワークの構築を進めている。ミャンマーでの衛星開発が成功すれば、ミャンマーはそのネットワークの中心的な役割を担う国の一つになる。近い将来、グループの指導によって各国が開発・保有する数十機の高機能衛星を連携運用することで、世界初となる災害時の連続撮影観測を実現することなどを目指している。

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投稿者:gotsuat 09:30| アジア