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2020年04月23日

【知 識】公衆網から自営網へスムーズな無線ネットワーク切替技術の実証成功


情報通信研究機構(NICT)、JR東日本、鉄道総合技術研究所(鉄道総研)は連携し、NICTが開発した全国通信事業者が提供する公衆網に接続された列車や自動車上の端末などが、自営網事業者(※1)が設置する自営スポットセル(※2)の圏内に移動した際に公衆網から自営網へのスムーズな無線ネットワークの切替えを可能とする基盤技術の実証実験に成功した。

この基盤技術は自営網事業者と公衆網事業者間で加入者情報を共有する必要がなく、公衆網などの一般的なネットワーク回線を経由して自営網に事前に一度アクセスしておくことで、接続切替えに要する時間を大幅に短縮できる。今後普及が期待されるローカル5G(※3)のように建物や土地の範囲限定で自営サービスを提供するための自営スポットセルに対して、非常に短時間での接続が実現可能で、サービスを安定して提供することができる。

今回、JR東日本 烏山線(栃木県)にミリ波帯を用いた自営のリニアスポットセル(※4)を構築し、列車に設置した端末を用いて実証実験を行った結果、従来は4分以上掛かっていた公衆網から自営網への接続切替時間が平均5秒以下、最大でも10秒程度に短縮できることを実証した。さらに地上複数地点の動画をリニアスポットセル通過中の車上端末に同時に伝送し、公衆網接続時と比べて低遅延で動画伝送できることを確認した。


※1 自営網事業者
全国通信事業者とは異なり、オフィス、駅、商業施設などで独自に基地局を設置して専用の通信サービスを提供する事業者。このような施設の管理者が自営網事業者となり、独自に自営網を設置するような場合もあれば、ローカル5Gを専門に扱う事業者が自営網事業者として、このような施設の自営網を設置・運用する場合もある

※2 自営スポットセル
自営網事業者が設置する特定エリアに限定したセル(通信エリア)のこと。28GHz帯などで運用する自営スポットセルで移動ユーザにサービスを提供する際に、自営網への接続処理に時間が掛かると接続が間に合わず、十分なサービスの提供が難しいという問題があった。通信事業者の展開する 28GHz 帯を利用する狭域セル(マイクロセル)でも同様の問題があるが、通信事業者は周波数の異なる広域セル(マクロセル)も同一エリアで運用しているため、制御信号をマクロセルでやり取りし、マイクロセルの接続手続を簡略化又は省略することで、この問題を解決している。一方で自営網事業者が独自にマクロセルを設置することは、コスト的にも技術的にも難しく、自営網への高速接続技術の実現が求められていた

※3 ローカル5G
5Gで実現される超高速、超低遅延、超多数端末同時接続などの技術を企業や自治体などの自営網事業者が独自に構築するネットワーク。全国通信事業者が全国で均一に提供する 5Gの通信サービスに対して、ローカル5Gは自営網事業者が自らの土地や建物など、場所限定で提供する自営の通信サービスに当たる。また、全国事業者が展開するネットワークを公衆網、自営網事業者が設置する自営のネットワークを自営網という

※4 リニアスポットセル 
スポット的に配置されたリニアセル。リニアセルは鉄道路線や高速道路のような線状に展開されるエリアで列車や自動車との通信を行うために直線状に形成したセル(通信エリア)又は無線システム。形成すべきエリアが沿線に限定されるため、間隔を空けて無線機を配置することでリニアセルは比較的容易に構築できるが、 長距離にわたってリニアセルを構築するためには設置コストの低減が重要な課題であり、光通信技術を用いて無線機の構成を簡略化する手法や、各無線機のビームの指向性を絞って電波到達距離を延ばす手法などが広く検討されている

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:35| 知識