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2019年11月15日

【アジア】東洋紡 サウジアラビア海水淡水化公団と共同実証実験を開始

東洋紡は海水淡水化プラントから排出される濃縮海水を効率的に利用する新しい膜技術の実用化に向け、2019年10月にサウジアラビアの海水淡水化公団(Saline Water Conversion Corporation 以下:SWCC)と、東洋紡の連結子会社 アラビアンジャパニーズメンブレンカンパニー(Arabian Japanese Membrane Company,LLC 以下:AJMC)とともに、共同実証実験の実施に関する覚書を締結した。

雨や地下水に乏しい中東地域では海水から飲料水を作り出す海水淡水化プラントが多く稼働しており、中でもサウジアラビアでは、厳しい気候や人口増加、経済成長を背景にプラントの需要が旺盛で、東洋紡は1980年代から海水淡水化プラント用として中空糸型逆浸透膜(Reverse Osmosis=RO膜)を長年にわたり供給してきた。現在、中空糸型RO膜が作り出す真水は一日あたり約160万トンで、640万人分の使用量に相当する。

今回、実用化を目指すのは「ブライン(=塩水)コンセントレーション(=濃縮)膜(�BC膜�)」と呼ばれる、高濃度の海水を処理するための新しい膜技術で、東洋紡が長年培った中空糸型RO膜の技術を応用した。BC膜を活用することで、海水淡水化プラントで真水を製造する過程で排出される濃縮海水を希釈された海水とさらに高濃度な濃縮海水とに分離できる。希釈された海水は海水淡水化プラントで再利用することで、造水量を増加させることができる。もう一方の高濃度の濃縮海水からは蒸発・結晶化工程を通じて、効率的な有価物の回収が可能になることが期待されている。BC膜技術の実用化により、濃縮海水を余すことなく再利用する無排水化の実現に向けた取り組みを支援する。

覚書の締結を受け、東洋紡・SWCC・AJMCは、SWCCのAl Jubail 海水淡水化プラントに設置される実証実験装置の運転を開始する予定で、BC膜の基本特性を把握するとともに運転ノウハウを確立し、早期の実用化を目指す。

近年、海水淡水化プラントから出る濃縮海水が海中に排出される際の環境負荷が課題であるとして、SWCCは、濃縮海水の革新的な処理技術の開発に注力してきた。持続可能な海水淡水化技術の実現に向けた今回の取り組みは、サウジアラビアが掲げる「ビジョン2030」においても成果が期待されている。

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投稿者:gotsuat 09:30| アジア