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2019年08月23日

【流 通】2019年(第27回)コスモス国際賞受賞者決定


国際花と緑の博覧会記念協会は、2019年(第27回)コスモス国際賞受賞者をスチュアート・ピム教授に決定した。

スチュアート・ピム教授は、地球上の生物の食物網の複雑さや種の絶滅速度等について、数理モデルを利用することにより理論的に明らかにし、地球規模の生物多様性に関する政策などに大きな影響を与えてきた。また、NGO「セービング・ネイチャー」を立ち上げ、生物保全活動プログラムを実践する団体を支援するなど、生態系や生物多様性の保全に対して、科学と実践の両面において多大な功績を果たしてきた。

ピム博士は、1970年代後半から1980年代初頭に食物網の数理モデルの研究に取り組み、食物連鎖のリンク数とその安定性に関する数理モデルを構築する一方、理論の実証研究も行った。この業績は、生態学における食物網の構造−動態に関する数理的研究の先駆となり、その後多くの研究者に食物網の理論研究を促し、「環境科学をより科学たらしめた」人物と評されている。

また、1990年代より保全生態学に取り組みを始め、人間による生息環境の破壊による世界的な種の絶滅は、自然に起こる絶滅のおよそ1,000倍の速さで起きていると警鐘を鳴らした。それ以来この数字は、その後方法などの改善により修正されてきたものの、ミレニアム生態系評価や地球規模生物多様性概況評価などにも使われ、国際的な環境政策にも重要な基礎を与えた。さらに、ピム教授は保全のシンボルとなる生物種の保全に取り組む一方で、狭い繁殖域や採餌環境を持つ種の方が、さらに大きな絶滅の危機に瀕していることを示した。ピム博士は、ブラジル大西洋沿岸、アマゾン流域の雨林およびタンザニアの熱帯林における研究から、こうした種が人間活動の影響をより受けやすいことも実証している。

こうした研究を基礎として2007年、「セービング・スピーシーズ」を設立し、生物多様性保全上重要な地域における保全活動のプログラムと保全のための資金提供者をマッチングさせる活動を展開し、生息域の分断を防ぎ、より大きな保護区を形成するなどの成果を各地で挙げている。現在、「セービング・スピーシーズ」は、「種を救うこと」から「自然そのものを救うこと」へと活動を拡充しようとしている。

このように、科学を通じた寄与だけに留まらず、政策立案と実践への適切な関与により、地球規模での生態系や生物多様性の保全に対して、大きな貢献を果たしてきたピム教授の業績は、「自然と人間との共生」を理念とするコスモス国際賞の授賞にふさわしいと評価した。

コスモス国際賞は1990 年に大阪で開催された「国際花と緑の博覧会」を記念して創設された顕彰事業であり、「自然と人間との共生」という博覧会理念の発展に貢献する業績を挙げた1個人もしくは1チームに国際花と緑の博覧会記念協会が授賞している。

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投稿者:gotsuat 09:40| 流通