<< 前のエントリ合通ロジのトップページへ
2018年06月27日

【流 通】日立製作所 熟練者と同等の品質を確保できる切削加工誤差補正技術を開発


日立製作所はNC(数値制御)(※1)切削加工機の個体差を考慮した加工誤差補正技術を開発しました。熟練者の加工ノウハウをデジタル化し、切削する加工機・工具・素材形状などに応じて制御プログラム(以下、NCデータ)を自動で補正することで、加工品質を高めることができる。複数の工場の切削加工機を組み合わせた量産加工において、無補正で加工した場合と比べ加工精度が4〜6倍向上し、熟練者に頼ることなく、同品質加工を実現する。

国内の製造業では少子高齢化に伴い、熟練者の減少と、加工ノウハウの引継ぎ手である若手就労者が減少している。一方、品質維持は必須であるため、熟練者の加工ノウハウに頼ることなく、複数の切削加工機で同品質の加工を実現する技術が求められている

切削加工中の切削工具のたわみ形状が原因で生じる切削加工の誤差は、機械の個体差、周囲の環境、経年劣化などの複数の要因により1台ごとに異なるため、熟練者はこれを考慮して加工誤差の補正を行なっている。補正には属人的な加工ノウハウが必要であり、継承が大きな課題となっている。そこで日立製作所は切削加工の加工誤差を予測し、NCデータの内容を自動で補正する技術を開発した。その特長は以下の通り。

1. 切削加工誤差の予測技術
切削加工機・切削工具の剛性(※2)と切削加工誤差には因果関係があることに着目し、熟練者の加工ノウハウを物理モデル化することでデジタル処理を可能とした。熟練者が推測している機械の主軸(※3)の剛性、工具の剛性を考慮した加工誤差生成メカニズムを物理モデル化して、工具先端の適正な狙い位置を推測し、補正する。物理モデル中の定数である切削加工機の主軸の剛性は、主軸に加わる力と、主軸の変形量の関係を加工機ごとに実測して決定することで高精度な予測が可能となる。

2. 切削加工誤差の自動補正技術
切削加工誤差を自動補正し、NCデータを出力する誤差補正技術を開発しました。NCデータ・切削加工機の剛性・切削工具の形状・素材形状などの情報を入力することで、熟練者の加工ノウハウに頼ることなく、高精度な加工ができるNCデータを自動出力する。これにより、複数台の切削加工機で同品質な加工を容易に実現する。この技術を複数台の切削加工機に適用して検証した結果、無補正で加工した場合より加工精度が4〜6倍向上し、全ての切削加工機で寸法公差50μm以下を実現した。日立製作所はこの技術により「クラウドマニュファクチャリング(Crowd Manufacturing)」を実現し、多様化が進む顧客ニーズへの柔軟な対応と高稼働率の生産体制の両立に貢献する。

※1 NC (Numerical Control)
数値制御により、切削加工機を自動的に制御すること
※2 剛性
物質が力を受けた際の変形(寸法変化)のしにくさを表す数値。剛性が高い物質ほど変形しにくい
※3 主軸
切削加工機で、切削工具を回転させるための加工機側の軸

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:40| 流通