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2013年05月17日

【環境】JST 固体酸化物形燃料電池を低温化する方法を発見


 科学技術振興機構(JST)は、固体酸化物形燃料(SOFC)※1の動作温度を350℃にまで下げるための材料設計指針を明らかにした。

 燃料電池の中で最も高いエネルギー変換効率を示すのがSOFCだが、現状は動作温度が700〜1000℃と高温であることから、大型発電設備や家庭用発電に用途が限られ、SOFCを多様な用途で使用するには動作温度を700℃以下にする必要があった。そこで、電解質※2の材料を従来の酸素イオンが伝達する酸化物に代えて、低温でも高効率に輸送できる水素イオン(以下プロトン)酸化物を用いて、動作温度を下げる研究が盛んに行われていた。

 今回、代表的なプロトン伝導性酸化物※2としてイットリウム※3を添加したジルコン酸バリウム※4を用いて、高温下のプロトンの挙動を観測した。その結果、プロトンの伝導しやすさは、イットリウムとプロトンの引きつけ合う力である束縛エネルギー※5によって決まることが分かった。また、添加元素とプロトン間の束縛エネルギーが小さいほど、プロトン伝導度が向上する法則を発見し、束縛エネルギーと電解質の動作温度の関係を明らかにした。このモデルに基づき、束縛エネルギーが低い添加元素を用いた場合、350℃という中温度域でも燃料電池の動作に十分なプロトン伝導が得られることが示された。

 実用的な中温度域で十分な性能を持つ燃料電池が開発可能になれば、燃料電池として使用する燃料、材料や環境の幅がさらに広がり、導入および普及に大きく貢献することが期待できる。

※ 1 固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cells)・・・略称SOFC。固体酸化物を電解質として用いた燃料電池。燃料電池は水素と酸素を利用した次世代の発電システムであり、水の電気分解と逆の原理によって高効率の発電を行う。
※ 2 電解質・・・燃料電池において、特定のイオンだけを選択的に通し、電子やそのほかのイオンを通さない物質。
※ 3 イットリウム・・・原子番号39の元素。主に蛍光体としてディスプレイに使われる。
※ 4 ジルコン酸バリウム・・・高温超電導体材料と反応しないため、高温超電導体を作るときのるつぼとされる。
※ 5 束縛エネルギー・・・正の電荷を持つプロトンと相対的に負の電荷を持つ添加元素が引き合うエネルギー。プロトンを添加元素の周りから解放し高速に伝導させるには、このエネルギーよりも大きな熱エネルギーが必要となる。

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:55| その他の取組内容 【取り組み内容別】