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2012年06月29日

【知識】理化学研究所と第一三共が共同研究契約を締結

理化学研究所は、文部科学省の委託事業「次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発(以下:ライフサイエンス・グランドチャレンジ)」の成果の活用を目的に、第一三共と共同研究契約を締結した。

共同研究では、ライフサイエンス・グランドチャレンジの6つの研究開発チームのうち、分子スケール研究開発チームが開発中のソフトウェアの1つである、全原子分子動力学シミュレーションソフトウェア「MARBLE(マーブル ※)」を使用する。世界トップレベルの計算性能を誇るスーパーコンピュータ「京」の能力を最大限に活用し、社会的ニーズの高い医薬品などの機能分子を合理的に創製する手法の開発に取り組む。

有効な医薬品がいまだに見つかっていない難病の存在や、さらなる高齢化社会の進展により、わが国は新しい医薬品の開発に早急に取り組む必要に迫られている。一方、構造生物学の急速な発展は、生体内で働くタンパク質の機能を原子レベルの立体構造で理解可能となった。医薬品など機能分子の作用メカニズムについても、原子レベルでの研究が進んでいる。こうした研究では、スーパーコンピュータを用いた大規模なシミュレーションが不可欠とされる。

ライフサイエンス・グランドチャレンジの6チーム(分子スケール研究開発チーム、細胞スケール研究開発チーム、臓器全身スケール研究開発チーム、データ解析融合研究開発チーム、脳神経系研究開発チーム、および生命体基盤ソフトウェア開発・高度化チーム)では、ライフサイエンス・医療分野の先進ソフトウェア約30個を対象に2006年10月から研究開発を進めてきた。理化学研究所は、2011年11月にスーパーコンピュータ「京」で、当初の性能目標である10.51ペタフロップスを達成しており、スーパーコンピュータ「京」は2012年9月末から共用が開始される予定になっている。これにより、「京」を活用したライフサイエンス・医療分野の先進ソフトウェア群を使ったシミュレーションが可能な環境が整う。

理化学研究所と第一三共との共同研究の目的は、ライフサイエンス・グランドチャレンジで開発を進めてきた先進ソフトウェアを利用して、医薬品などの機能分子の創製手法を開発していくことにある。今回、約30個の先進ソフトウェアの中から、分子スケール研究開発チームの池口満徳横浜市大准教授が開発してきた、生体分子の作用メカニズムの詳細な理解を目的とした全原子分子動力学シミュレーションソフトウェア「MARBLE」を使用する。共同研究では、理研の持つスーパーコンピューティング基盤技術と、MARBLEの研究開発を行っているライフサイエンス・グランドチャレンジの基礎研究能力、および第一三共の持つ創薬研究能力を組み合わせることで相乗効果を上げていく。

※ MARBLE(マーブル)
タンパク質や核酸など生体分子の立体構造で水素まで含んだ全原子モデルを解く分子動力学ソフトウェアで、膜タンパク質が大規模に構造変化する様子もシミュレーションできる。開発責任者は、ライフサイエンス・グランドチャレンジの分子スケール研究開発チームの池口満徳横浜市大准教授。なお医薬品など機能分子の合理的な創製に必要な高精度の自由エネルギー計算を可能にするため、MARBLEには、京都大学の松林伸幸准教授が開発したエネルギー表示法を組み合わせる。
ライフサイエンス・グランドチャレンジ終了の2012年度末以降も、MARBLEの研究開発は文部科学省のHPCI戦略プログラム※3「分野1:予測する生命科学・医療および創薬基盤」の中で、またエネルギー表示法の研究開発は「分野2:新物質・エネルギー創成」の中でさらなる高度化を図っていく計画である

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投稿者:gotsuat 10:55| 知識