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2012年04月26日

【流通】帝人ファーマ SAS治療に携帯電話網利用の在宅医療診療支援システム開発

帝人ファーマは、携帯電話網を活用することにより睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療・指導を容易にするシステム「ネムリンク」を、日本で初めて開発した。「ネムリンク」は、医療機関と患者さん双方の負担を軽減することで、SAS治療において大きな課題となっている治療継続率の向上に効果が期待される。

SASは、睡眠中に呼吸停止を繰り返す病気で、激しいイビキや起床時の頭痛、日中の眠気などの症状がある。日中の眠気のため、交通事故や労働災害、生産性低下などにつながる社会的影響の大きな疾患であることに加え、呼吸停止に伴う低酸素状態が原因となって、高血圧や糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞などを合併し、死亡率が高まるとの報告もされている。

国内におけるSAS患者の数は年10%以上の増加を続けており、現在の顕在患者数は約20万人とされている。一方、潜在患者は人口の約3%(約300万人)存在すると推定されており、その掘り起しこが社会的な課題となっている。SASの治療方法として最も一般的であるCPAP療法(鼻マスクから気道に空気を送り、無呼吸状態を防ぐ治療法)は継続的な治療が非常に重要だが、治療に伴う不快感や、多忙な生活の中で通院できないなどの理由から、治療の継続を断念する患者さんもおり、SAS治療においては治療継続率の向上が大きな課題となっていった。治療継続率の向上には、SAS治療機器に記録される睡眠中の機器稼働状況など、データに基づく豊富な診療情報を活用することが有効(※)だが、そのためには患者宅の機器からダウンロードしたデータを入手し、医療機関でそのデータを解析する必要があるため、医療機関にとって大きな負担となっている。そのため、診療時にデータを活用している医療機関は、SAS診療を行っている医療機関の30%程度とされており、治療継続率が低迷する一因となっていた。

「ネムリンク」は、携帯電話網を活用する通信端末を通じて、機器の稼働状況をはじめとする様々なデータをサーバに自動送信・解析し、医療機関でのデータを活用した診療を容易にした。送信されたデータは自動的に解析されるため、医療機関のデータ解析時間や手間を削減することができ、さらに解析結果をわかりやすく加工した形で確認できることから、睡眠専門の医療機関でなくとも、容易にデータに基づいた診療を行うことが可能となる。また、患者さん向けにわかりやすいレポートを出力する機能や、過去の指導記録、コールセンター応対履歴などの記録・閲覧機能も備えている。これらの機能を用いた適切な診療・指導を受けることにより、患者さんも治療効果を実感できることから、治療継続への動機づけとして期待することができる。

今後、帝人ファーマのSAS治療機器に順次「ネムリンク」を投入する。これにより、データを活用した診療を行う医療機関が増加することで、治療継続率の大幅な向上を期待するとともに、睡眠専門医でなくとも容易に診療に活用できるデータを提供することで、SAS治療の裾野の拡大を図る。その結果、将来的には、「ネムリンク」がSAS治療に関わる多くの医療機関に不可欠なシステムとなることを期待している。帝人ファーマが在宅医療事業として展開している在宅酸素療法用の酸素濃縮装置では、「ネムリンク」と同様に携帯電話網を活用したモニタリング機器を既に開発・活用している。このように在宅医療におけるIT活用を推進することにより、将来的には遠隔医療や病診連携など、より高品質な在宅医療の提供も期待できるとしている。

※ データを活用した診療を行う医療機関では治療継続率が80%を超える一方で、そうでない医療機関では治療継続率が50%程度に低迷しています。(帝人ファーマ 調べ)

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:40| 流通