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2011年09月16日

【流通】宮崎大と東ソー・ファインケム 酸化亜鉛 スピンコート法で薄膜形成

宮崎大学工学部の吉野賢二准教授らの研究グループと東ソー・ファインケムは共同で、酸化亜鉛(ZnO)をスピンコート法で製膜する技術を開発することに成功した。新開発の亜鉛材料を基板に垂らし、200℃以下の低温、大気圧下で熱処理することにより、酸化亜鉛薄膜を形成することができる。

酸化亜鉛薄膜は、フラットパネルディスプレイ(FPD)や薄膜太陽電池のキー部材となる透明電極向けでの採用拡大が期待されているが、現状ではスパッタや化学気相成長法(CVD)といった大型設備が必要。これをスピンコート工程で行うことができれば、大幅な工程短縮とコスト低減に結びつく可能性が高い。

東ソー・ファインケムが開発した特殊な亜鉛材料を用い、スピンコート法と呼ばれる作製プロセスで基板に液を垂らし、化学反応を起こして酸化亜鉛薄膜を形成する。製膜条件を制御することで、結晶性での酸化亜鉛薄膜が200度以下の低温で形成可能なことをX線解析や透過率測定および抵抗率測定で確かめた。

酸化亜鉛は、白色顔料などの従来の用途に加え、光触媒、紫外線カット、赤外線反射、帯電防止などに近年は用途が拡大。とくにFPDや薄膜太陽電池に用いられる透明電極材料として、希少金属を含むインジウム・スズ・オキサイド(ITO)からの代替として実用化研究が進んでいる。

ただ、製膜時には、真空蒸着法であるスパッタリングや、化学蒸着法であるCVDプロセスなど複雑で大掛かりな設備が必要となる。これに対し今回開発した材料・プロセス技術は、スパッタで用いる真空設備が不要なほか、CVDのように高温で熱する必要もない。基板に浸して、スピンをするだけで製膜が可能なことから、生産コストを大きく引き下げることができるうえ、大面積への適用もしやすい。低温プロセスのため、プラスチック基板への応用へも道を開くことになり、フレキシブル材料による電子ペーパー、タッチパネルの実用化を促進させる要因となることも予想される。

今回、開発した亜鉛材料の特徴は、材料中に酸素源を導入するなど、スピンコートによる塗布でも低温で酸化亜鉛の形成が可能なように工夫した。両者では、これまで開発した、スプレー塗布法による酸化亜鉛の低温成膜技術とともに、スピンコート法による本成膜技術についても、太陽電池等のデバイスへの応用などの実用化に向けた研究開発をさらに進めていきたいとしている。

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:40| 流通