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2011年08月31日

【知識】凸版印刷と住友大阪セメント、コンクリート内の鉄筋に取り付け可能なUHF帯ICタグを共同開発

凸版印刷と住友大阪セメントは、コンクリート構造物内の鉄筋に取り付けて、コンクリートの種別や品種などに関する情報を持つことで、保守メンテナンスに活用可能なUHF帯ICタグを共同開発した。今後、量産試作品による各種検証、ユーザーによる評価、さらにucodeタグ(※1)認定作業を進め、2011年10月より住友大阪セメントがサンプル提供を開始、2012年1月には凸版印刷と住友大阪セメントの両社で販売を開始する予定。

近年各国で発生した地震災害により、建築物の安全に対する意識が更に高まっている。建造物に使用されているコンクリートにおいても、安全性の面から確実な品質管理、保守、メンテナンスが求められている。一方で膨大な量のコンクリートの管理は負荷が大きく、省力化などを目的としたICタグの活用が検討されている。具体的には、コンクリートの種別や品質などにかかわる情報が関連付けされたICタグを、コンクリート内部に埋め込んで管理する手法で、バーコードなどと比較して破損が少なく、読み取り作業が手軽というメリットがある。

一方、これまでコンクリート内蔵の実験に採用されてきた13.56MHz帯のICタグでは、コンクリートの材質や厚みの影響を受けて通信距離が約5cm程度以下となるため、厚みのあるコンクリートでは使用できず、かぶり厚さ(鉄筋とコンクリート表面間との厚み)が深い大型の建造物へ内蔵することができないなど、利用範囲や運用方法が限定されていた。さらに生コンクリートにICタグを添加して流し込んだ場合には、ICタグがコンクリートの不特定位置に固定されることから、ICタグを探し出すために一度に多数のICタグを同時添加しなければならないなどの課題があった。

今回開発したUHF帯ICタグは、建設現場での利用を考慮し、コンクリートの材質や鉄筋などの影響を受けにくい構造や材質を採用した。また、同ICタグは、かぶり厚さと同程度、あるいはそれよりも深く設置するため、鉄筋コンクリートの耐久性(中性化、乾燥収縮など)に悪影響を及ぼすことはなく、またコンクリート製品の製造時にも不具合が生じないことをテストピース(供試体)により確認されている。

UHF帯ICタグ向けの中出力ハンディリーダ((※2))を使用し、かぶり厚さ15cmの、コンクリートの鉄筋に本ICタグを設置した場合、コンクリート表面から通信距離が約20cm以上でも読み取りが可能。また、最大埋め込み深さは25cm程度(実測値)まで可能で、厚いコンクリートや大型の構造物で活用できる。920MHz帯〜950MHz帯のいずれの周波数帯においても読取り性能が落ちないアンテナ設計で、品質信頼性の高いアンテナ材質とチップ実装方法を採用。また、電波の指向性が緩いため、読み取り作業時には、コンクリート内に内蔵されたICタグをピンポイントで探して読み取る必要がありません。離れた位置から簡単に読み取ることができる。

また、本ICタグは簡易に取付可能な専用取り付け器具を有し、様々な太さの鉄筋に対応可能です。鉄筋の組立てに使用する結束線などで簡単に取り付け(固定)作業が行え、コンクリートの種別や品質などに関わる情報を確認することができ、保守メンテナンスに活用出来る。

※1 ucodeタグ
ucodeは現実世界のさまざまな「モノ」や「場所」などを識別するための128bitの固有識別番号で、ucodeタグはT−engineフォーラム(会長坂村健東大教授)内のユビキタスIDセンターにて認定される

※2 中出力リーダ
平成22(2010)年5月の省令改正により制定。簡易無線局の申請のみで、一般公道上や不特定の複数の拠点で使用することが可能。ある程度の中距離一括読取りが可能であるため利便性が高く、今後利用用途の拡大が期待されている。


※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:35| 知識