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2011年08月17日

【流通】住友電工 海水淡水化の前処理コストを大幅に低減できるTT(TEP Trap)処理技術を開発

住友電工は、逆浸透法による海水淡水化の前処理において、RO膜(逆浸透膜)の透水性能を低下(ファウリング)させる生体外分泌高分子粒子(※1)(TEP)を効率よく除去できるTEP Trap膜(TT膜)と、TT膜が捕捉したTEPを排出する洗浄機構を組み込んだTT装置を開発した。

昨今、世界的な水不足から、エネルギー効率に優れる、RO膜を用いた逆浸透法による海水淡水化への関心が高まっている。逆浸透法による海水淡水化は、前処理として、海水に含まれる微生物などの微粒子を除去した後、RO膜により塩分を分離し真水を得ます。前処理には、砂濾過やUF膜(限外濾過膜)・MF膜(精密濾過膜)等による濾過が行われている。

海水中に多量に含まれるゼリー状のTEPは砂濾過では除去できないが、RO膜に付着すると、粘着して取れにくくなり、さらに細菌繁殖の基となってバイオフィルム(※2)が形成され、ファウリングを引き起こす。UF膜やMF膜ではTEP除去が可能だが、膜に付着するTEPにより流量が大幅に低下するため、大きな面積の膜が必要となり、造水コスト上昇の要因になっている。

今回、開発したTT膜は、TEP除去に加え、高流量での濾過が可能であることからUF膜・MF膜と比べ膜面積を大幅に削減でき、UF・MF膜単独の前処理に比べ処理コストをほぼ半減できるものと見込んでいる。TT膜・TT装置の特長は、次のとおり。

1 TEP除去と高流量での処理が可能
住友電工の独自材料であるPTFE製延伸膜「ポアフロン」技術を活用して開発したTT膜は、独特のフィブリル構造(※3)によりTEPを絡め取る仕組みで、膜表面が閉塞しにくく、10m/日とMF膜比で約10倍の流量での濾過が可能。なお、TEPの除去は処理前後の定量分析により検証した。

2 海水淡水化の前処理に必要な膜面積を大幅に低減
TT膜で海水を濾過すると、RO膜への供給水として十分な水質である、SDI(※4) 2.0〜3.0の清浄な前処理水を得ることができる。また、TT膜濾過後に、UF膜又はMF膜濾過を行うと、さらに高水質のSDI1.0〜2.0の前処理水を得ることができる。この場合においても、TT膜濾過により、MF膜濾過での流量が約2倍に向上するため、UF・MF膜単独の前処理に比べて総膜面積の40%削減ができる。

3 TEPを効率的に排出する洗浄機構
TT膜が捕捉したTEPは、独自の物理洗浄を組み合わせた逆洗浄(※5)機構により、効率良く排出され、高流量とTEP除去性能を維持する。また、物理洗浄との組み合わせにより、薬品使用量は、逆洗浄で毎回薬品を注入する従来方法と比べて半減できる。

※1 生体外分泌高分子粒子(TEP:Transparent Exo-polymer Particles)
多糖類から成るゼリー状物質で、重量濃度は0.1ppm程度と小さいものの海水中では膨潤して体積濃度は重量濃度の100倍以上になる
※2 バイオフィルム
微生物により形成される構造体
※3 フィブリル構造 :
極細の繊維が束になって繊維を形成している構造
※4 SDI(Silt density Index)
逆浸透法において、RO膜モジュールへの供給水の微量な濁質を定量化する指標。値が小さくなるほど高水質
※5 逆洗浄
濾過とは逆の方向に水を流して、蓄積した物質を排出する洗浄方法

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:40| 流通