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2011年01月25日

【流通】住友金属鉱山と東北大学が共同研究で新しい蛍光体と製造技術を開発

住友金属鉱山は、東北大学多元物質科学研究所 垣花眞人教授の研究グループとの共同研究により、近紫外光または青色光を照射することによって青緑〜黄色に光る高輝度なシリケート蛍光体(※1)とその新しい製造方法の開発に成功した。当研究で開発した高輝度蛍光体は高効率白色LED(※2)への応用が期待される。

白色LEDは液晶テレビジョンや携帯電話の液晶パネルのバックライト光源に使われている。既に白熱電灯への置き換えが進みつつあり、急激な市場の拡大が期待されている。今後、蛍光灯への代替など、白色LEDのより多種多様な光源への利用を進めていくためには、高い発光効率を有し、自然な色合いを表現できる、より安価な新規蛍光体が求められている。

当研究では、290nm(nano meter)から420nmの近紫外光をあてると青緑色(480nm)に発光する、ユーロピウムを添加したバリウム−ジルコニウム−シリコン酸化物蛍光体((Ba,Eu)ZrSi3O9)の開発にはじめて成功した。405nmの光を照射した時の内部量子効率(※3)は、67%に達している。今後更に効率化を進め、近紫外LEDとの組み合わせにより高効率な白色LEDへの応用が期待できる。また、青色を黄色に変換する高輝度の蛍光体((Sr,Ba,Eu)2SiO4)の開発に成功し、従来の黄色蛍光体(YAG:Ce)に比べて約1.5倍の蛍光強度(励起波長:445nm、発光波長:563nm)を達成した。これにより、より高輝度な白色LEDの開発が可能となった。

さらに、当研究は、当研究に先立ち垣花研究室が独自に開発した水溶性ケイ素化合物(WSS、※4)を用いたプロセスをその製造に用いる。従来法では、蛍光体は固体の原料粉末を機械的に混合し、加熱焼成していたが、新製法では液体の原料を用いるため、原子レベルで均一に混合させることができる。またWSSを用いることにより、数多くの組成の材料合成を一度に行える“並列合成法”(※5)が可能となり、蛍光体組成の最適化や新たな蛍光体の探索を効率よく行うことができるようになった。((Ba,Eu)ZrSi3O9)の開発は、この並列合成法を用いたもの。今後も新製法の活用により、高輝度蛍光体の開発が加速されることが期待できる。

当社ではこれらの蛍光体の耐湿性と光学特性を更に向上するため、蛍光体の表面を緻密な膜で被覆する技術の開発を行っている。すでに本研究成果をベースに量産技術確立に向けた試験を実施中であり、近い将来、低コストで輝度の高い白色LED用蛍光体を新製品として市場に提供して行く予定。

なお、本研究の内容については、新学術領域:融合マテリアルプロジェクトにおいて重要な基幹材料として位置づけられ、公開シンポジウムにてWSSのゲル化能に関する研究成果が発表される予定。

住友金属鉱山は、2003年から東北大学多元物質科学研究所と包括共同研究開発を行っており、さらにこれを発展させ、相互の協力関係を強化するため、2010年6月に東北大学と連携協力協定を締結した。


※1:蛍光体
光エネルギーを吸収すると、吸収した光よりも長い波長の光を発する機能性材料のこと。蛍光灯や白色LED、およびプラズマディスプレイなどで使用されている。シリケート蛍光体とは構成元素にシリコン(Si)を含む蛍光体のこと

※2:白色LEDの構造
LEDチップからは、青色(約455nm)光と、青色光が蛍光体によって変換された黄色の光が出る。青色と黄色は補色の関係にあるため交じり合って白色に見える

※3:内部量子効率
蛍光体に吸収された光子数のうち、発光として取り出す光子数の割合のこと

※4:水溶性ケイ素化合物(WSS)
プロピレングリコールなどをシリコン原子に結合させたもので、水に溶解しても安定に存在する化合物である。これまでSiを含む化合物で水に溶かして安定に存在するものは見つかっていなかった。この化合物は、垣花研究室で独自に開発された

※5:並列合成法
数十種類の試料を同じ条件で一度に合成する手法のこと。水溶性の原料を使うことで、複数の原料の採取・混合を簡便に行うことができる

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:40| 流通