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2010年11月08日

【流通】工場内の未利用温水を蒸気に変換するシステム「スチームリンク」の開発

東京ガス、荏原製作所、三浦工業は、工場内で発生する90℃程度の低温未利用温水を、加熱や殺菌などの生産工程に利用できる160℃程度の蒸気に変換する「スチームリンク」を開発した。未利用温水から蒸気に変換するシステムの開発は、国内で初めて(※1)。荏原製作所および三浦工業は、2010年12月からスチームリンクの受注を開始し、東京ガスは、供給エリア内における提案営業を行う。

90℃程度の温水は、冷却工程や燃焼廃ガスとの熱交換あるいは蒸気の凝縮など工場内の様々な生産工程から多く発生する。これらの低温の温水は、工場内の生産工程に利用する熱としては温度が低いため利用用途が限られており、未利用のまま廃棄・放熱されている温水は全国で年間33,000TJにも及ぶとされている(※2)。

スチームリンクは、工場内で発生する90℃程度の未利用温水で臭化リチウム水溶液を加熱させて、給水を130℃程度の低圧蒸気に変換し、さらに高圧蒸気を用いて低圧蒸気を昇圧することで、加熱や殺菌などの生産工程に幅広く利用できる160℃程度の蒸気に変換する。未利用温水から変換した蒸気を加えることで、昇圧に用いた高圧蒸気の約1.3倍の蒸気量を出力できるため、従来よりも蒸気ボイラに使用するガスの消費量を抑えることができる。スチームリンクを使用して約1,000kg/時(年間17.5TJ)の蒸気量を出力するケースでは、年間のCO2排出量を約24%(205t−CO2相当)削減し、年間のガス消費量を約10万m3N(4.1TJ)、ガス料金を約680万円節約する(※3)。 

またスチームリンクは、ガスエンジンコージェネレーションシステム(以下「ガスエンジンCGS」)の廃温水も蒸気に変換することができ、ガスエンジンCGSの廃ガスボイラから得られる蒸気とあわせることで、廃熱から得られる蒸気量を増大させることができる。なお、スチームリンクでは、発電出力500〜1,000kWクラスのガスエンジンCGSとの組み合わせを想定する。

スチームリンクは、荏原製作所が温水の低圧蒸気化技術確立を、三浦工業が低圧蒸気の昇圧技術とシステムの制御技術確立を、東京ガスがシステムコンセプトの検討や試作機試験を担当した。また、開発に当たってはツムラの茨城工場に試作機を設置し、2010年3月から実証試験を行い、負荷や冷却水温度などの変動に対しても安定した稼働が可能であることを実証した。なお2011年度には、今回開発の約2倍の出力を持つ機種をラインナップに加える予定で、現在開発を進めている。


※1 東京ガス調べ。 
※2 省エネルギーセンター「工場群の排熱実態調査研究要約集」より。 
※3 参考資料「3.仕様例」の条件において、都市ガスCO2排出原単位0.0495tCO2/GJ((財)省エネルギーセンター「工場・事業場のための温対法と省エネ法」より換算)、蒸気単価4.5円/kg、ボイラ効率90%、運転時間6,000時間/年とした場合の試算結果

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:40| 流通