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2010年10月18日

【流通】約10分の1の超音波エネルギーで腫瘍組織を壊死させる技術を開発

日立製作所(以下:日立)は、腫瘍組織の超音波診断向けの造影剤(※1)として研究を進めている数百nm(ナノメートル)サイズの液滴(以下、ナノ液滴(※2)を用いて、従来に比べ約10分の1の超音波エネルギーで腫瘍組織を壊死(えし)させる技術を開発した。


日立は、腫瘍組織の内部に到達するまではnmサイズの液滴で、到達後に超音波を照射すると、μm(マイクロメートル)サイズの気泡(マイクロバブル(※3)に変化し、腫瘍を精細に画像化するナノ液滴法を2006年に開発している。


今回、日立は、通常1,000分の1秒程度の短時間で消失してしまうナノ液滴から生成したマイクロバブルの存続時間を制御することに成功した。これにより、腫瘍組織の内部にマイクロバブルを行き渡らせたことを確認してから、超音波を照射して腫瘍組織を壊死させることが可能になった。マイクロバブルによって超音波の加熱効果が高まることから、従来の超音波だけの照射に比べ、約10分の1の超音波エネルギーで腫瘍組織を壊死させることができる。同技術は、ナノ液滴を造影剤に用いて腫瘍を精細に観察しながら、従来に比べ、より小さな超音波エネルギーで選択的に腫瘍を壊死させるものであり、診断から治療まで超音波を用いて一貫して行える医療技術の実現に道を開いた。同研究の一部は医療福祉機器研究開発制度の一環として、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託により行なわれた。



※1 造影剤
臓器などの映像を撮影する際に用いる薬品


※2 ナノ液滴
リン脂質の膜の中にフルオロカーボンを過熱状態で封入したナノサイズの液滴。過熱状態とは、過冷却の逆の現象で、相変化が起こるはずの温度以上に達しても、もとの相を保つ状態であり、ナノ液滴は沸点を超えた温度で液体が液体のままである状態。物理刺激として超音波が照射されると、液体から気体への相転移が起こりマイクロバブルになる。腫瘍組織の周りの血管壁は、正常な組織の周りの血管壁に比べ、構造がまばらであり、サイズの大きい物質を透過する性質がある。今回開発したナノ液滴は、正常組織を通らず腫瘍組織を到達する大きさで作られているため、腫瘍組織に対する選択性を持っている


※3 マイクロバブル
空気やフッ化炭素などの気体を界面活性剤で安定化した、数マイクロメートルの気泡。生体とは音に対する特性が違うために超音波診断においては造影剤として用いられるとともに、近年の研究から超音波治療の増感剤としても有用であると報告されている

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:40| 流通