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2010年07月23日

【流通】NICT 世界最高の分解能の航空機搭載映像レーダを開発

--- 高度12,000mの航空機から30cmの分解能で地上を観測 ---

情報通信研究機構(以下:NICT)電波計測グループは、航空機から30cmの細かさで地上を航空写真のように観測できる合成開口レーダシステム(Pi−SAR2)を開発し、その性能を実証した。合成開口レーダは、天候や昼夜に関係なく地上を観測することができるため、特に災害時の状況把握に有効。NICTの開発したレーダはインターフェロメトリ(※1)やポラリメトリ(※2)といった先端的な機能を装備し、航空機搭載レーダとしては世界的にも最高の性能であり、災害の把握等の他に都市や建築物の精密な観測などの新たな合成開口レーダ(SAR)(※3)の用途が期待される。

NICTでは、分解能(※4)1.5mの航空機搭載合成開口レーダ(Pi−SAR)を開発し、先端的な合成開口レーダ技術の先導的な研究を行うとともに、平成12年の有珠山および三宅島の火山噴火災害や平成16年に発生した新潟県中越地震に際して、広域にわたる被災地の状況を観測し、現地の災害対策や復興の一助となった。

一方で、多数の中小規模の土砂崩壊等を客観的に判断するという点で、1.5mという分解能に限界があり、さらなる高分解能性が必要であることが分かってきた。また、観測データを被災地にできるだけ迅速に提供することの必要性があらためて明確になった。

今回、Pi−SARの技術を継承し、分解能を大幅に向上させた新たなレーダシステム(Pi−SAR2)を開発した。Pi−SAR2では、広い観測幅(5km−10km)を持ち、インターフェロメトリやポラリメトリといった、前号機の先進機能を維持したまま、分解能が5倍細かい30cmを実現した。また、Pi−SAR2では、航空機上の処理システムを開発し、5km四方の領域の画像を15分で画像に再生することができる。これにより、迅速にデータを現地に提供することが可能になった。

30cmの分解能が実現したことにより、災害時の被害状況の把握がより的確になされ、より迅速な対応が可能となりった。災害の把握等の他に都市や建築物の精密な観測などの新たなSARの用途が期待される。

※1 インターフェロメトリ機能
離れて配置された2つのアンテナを用いて、人間が双方の目で立体的に見ることができるのと類似の方法で3次元的像を得る。電波の位相情報を使うため、非常に高精度で、航空写真に比べ全天候にわたって観測できるのが特長

※2 ポラリメトリ機能
電波は、電場と磁場が共に振動しながら伝搬する波であるが、電場の振動面を偏波と呼ぶ。任意の偏波に対し散乱する偏波の性質は、物体の形状や向きにより異なる。この性質を用い、偏波の組み合わせで地表面を観測し、それぞれの場合の散乱信号を精密に測定し、これらを利用して対象を詳細に識別する機能。Pi-SAR2では、偏波面が垂直な電波と水平な電波の2つを利用する

※3 合成開口レーダ(SAR: Synthetic Aperture Radar)
映像レーダの一種。小型のアンテナで受信信号強度と位相を正確に記録し、これをコンピュータで処理して高分解能を得る

※4 分解能
地上の物体の大きさがどこまで識別できるかの尺度。30cmの分解能とは、30cm以上離れた2つのものが映像の中でも2つに分かれて見えるという意味

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:40| 流通