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2010年07月02日

【流通】多人数で観察できるテーブル型裸眼立体ディスプレーをNICTが開発

--- 何もないテーブルに浮かび上がる立体映像 ---

情報通信研究機構(以下:NICT)けいはんな研究所ユニバーサルメディア研究センターでは、何もない平らなテーブルの上に立体映像が浮かび上がり、椅子に座っていても、周囲から複数人で同時に高さのある立体映像を観察できる、テーブル型の新しい裸眼立体ディスプレイ「fVisiOn」(エフ・ビジョン)の開発に成功した。

NICTけいはんな研究所ユニバーサルメディア研究センター(京都)では、高い臨場感を伴うコミュニケーション技術の確立へ向けて、裸眼で自然な立体ディスプレイの研究開発を進めている。テーブル上に立体映像を提示する場合、テレビ型の立体ディスプレイでは奥行き方向の立体感しか表現できず、これをテーブルに平置きして用いてもひとりでしか観察できなかったり、真上から覗き込むようにしか像を観察できないことが問題だった。一方、既存のボリュームディスプレイ(※)では、映像を表示するための縦置きのケース状の装置が従来はテーブル上に必要であり、それが空間を占有するために書類交換などの一般的なテーブルを使った作業の邪魔となることが問題だった。

今回新しく開発した技術は、何もない平らなテーブル面上に高さのある立体映像を浮かび上がらせて再生でき、着座時のような周囲360°から見下ろすように観察する場面に特化したものであり、複数人が裸眼で自然に利用できる。

立体映像の再生には、NICTが新しく開発した特殊な光学素子と、円状に並べられた多数の小型プロジェクターを使用する。これらの組合せでテーブルの上に置かれた物体が放つはずの光の状態を再現し、テーブルの周囲上方に円環状の立体映像が観察できる領域を創り出す。これらの仕組みは全てテーブル面よりも下側に配置されており、テーブル上には装置が一切ない。そのため、紙の資料や実物の模型の隣に立体映像を並べて表示したりすることなどもできる。

今後は、全周360°からの観察へ向けたシステムの拡張や、再生される立体映像の画質向上(像の鮮明さの改善、モアレの除去)や、より大きな立体映像の再生などに取り組む予定にしている。

開発した技術は、周囲上方からの観察に最適化した方式であるため、従来のテーブルを囲んで行うコミュニケーションの支援だけでなく、俯瞰する場面が多い地図を用いた作業(都市設計、交通整理、防災等)、インフォームドコンセントや手術の事前検討など医療での利用も期待できる。また将来的に装置の大型化ができれば、競技場のフィールドを立体的に再現して周囲の客席から観戦することも可能となる。


※ ボリュームディスプレイ
回転する円盤や前後に移動する板といった、一定の空間を高速に走査するスクリーンに同期して、その瞬間のスクリーン位置での断面の映像を投影することなどにより、体積のある立体映像を表現する方式の総称

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:40| 流通