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2009年10月09日

【流通】産総研 血液検査でガンに向かう肝炎の進行度を測定できる検査システムを開発

--- 疾患糖鎖マーカーの開発による次世代の検査診断体系の構築に向けて ---

産業技術総合研究所(以下:産総研)糖鎖医工学研究センター糖鎖遺伝子機能解析チームは、肝炎ウイルスの持続感染に伴い、数年単位で変化してゆく肝臓の病態を、定性的かつ定量的に測定できる検査システムの開発に成功した。この研究成果は、これまで検査入院が必要であったB型やC型肝炎ウイルスに感染した患者の、長期にわたる診断や治療、治療後のフォローアップに関連した身体的・経済的負担を軽減することが期待される。

慢性肝炎の診断治療のプロセスにおいて、肝炎ウイルスの持続感染により進む、肝臓の線維化の程度を確定することが必要となり、肝臓の組織病理学的検査(生検:バイオプシー)がしばしばなされる。生検検査は、体外より肝臓に向けて差し込んだ針によって、肝臓組織を採取して行う検査であるために、出血などのリスクもあり、身体的負担が大きい。しかも検査に際して、1週間程度の入院を必要とするので、この間の社会的経済的活動も制約される。日本のB型肝炎、C型肝炎感染者はそれぞれ、100〜130万人、150〜200万人と推定されることから、当該疾患に関連した社会的、経済的損失は極めて大きいと思われる。これらウイルス性肝炎は、感染から20〜25年程度の後に、肝硬変に進展し、肝細胞がんへと至ることが知られている。なお、国立がんセンターの発表するがん統計情報によると、原発性肝がんによって2004年度には34507人が死亡している。肝細胞がん患者の9割以上は、B型やC型肝炎ウイルス感染の既往を持っており、その内訳として、B型感染が約20%、C型ウイルス感染が約70%を占めると報告されている。

冒頭でも記したように、ウイルス性肝炎から肝硬変や肝細胞がんへ至る疾病の進行度は、肝組織における線維化の進展で推し量る。針生検・病理組織診断による直接評価の他、線維化は、線維化の進展に随伴して観察される血小板減少(15万未満)を指標とすることで、「間接的」にも評価される。血清トランスアミナーゼ(ALT)正常C型肝炎例への抗ウイルス治療ガイドラインに示されるように、例えば血小板数が15万未満であれば、その症例は線維化が進んだ患者であると推察する。この場合には肝生検を行って確認することが必要で、線維化グレード3(F3)以下であった場合は慢性肝炎、線維化グレード4(F4)であった場合は肝硬変として対処される。なお、肝細胞がんのリスクは線維化が進むほど高いとされており、肝細胞がんの出現頻度はF3では年率3〜4%、F4では年率7〜8%である。線維化の進展が想定される症例では、がんのスクリーニングも重要な鍵となる。このような臨床病理学的状況を鑑みると、身体的負担を軽減し、肝臓で進む線維化を直接的に測定できる検査法が必要である。このことは2008年に発表された「肝炎研究7カ年戦略」の目標としても取り上げられている。

開発を進めてきた糖鎖疾患マーカーは、研究背景に挙げた課題解決に向けて、大きな可能性を有するものである。

今後はより多くの人々が利用できるように「研究室レベルでの検出システム」から、「市中病院の臨床検査室で使用可能な検出システム」へと開発を進めている。開発が進めば、複数の臨床機関で採取された多数の検体を解析することが可能となる。これによって、得られた糖鎖疾患マーカーの信頼性と汎用性についての検証を行い、臨床検査として実用化を達成したいと考えている。

 

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投稿者:gotsuat 10:03| 流通