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2021年02月24日

【流 通】富士フイルム 医薬品候補化合物の心毒性評価試験サービスを開始


富士フイルムは医薬品候補化合物の心毒性評価試験サービスを2021年2月26日より開始する。同社子会社でiPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーであるFUJIFILM Cellular Dynamics(フジフイルム・セルラー・ダイナミクス、以下 FCDI)のヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いて、医薬品候補化合物による心毒性の発生リスクを高精度に予測するもので、顧客の創薬研究を支援する。同社はサービス開始を機に、ヒトiPS細胞を用いた創薬支援業務の受託サービスに参入し、さらなる事業拡大を図る。

医薬品の研究開発では、非臨床試験で安全性が確認されても、その後の臨床試験で予期せぬ重篤な心毒性が発生して、開発中止となるケースがある。現在、心毒性の一つである致死性不整脈を評価する細胞試験としてhERG試験(※1)が行われているが、致死性不整脈の発生リスクを高い精度で予測することは難しい。

近年、無限増殖性と多分化能を有するヒトiPS細胞を、狙った細胞に分化誘導して、医薬品の研究開発に活用する動きが加速している。富士フィルムはヒトiPS細胞を用いた、ヒトでの安全性の高精度評価手法の確立・普及を目指して、「ヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアム(CSAHi)」(※2)に参画した。FCDIが有するiPS細胞関連技術・ノウハウを生かし、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を心毒性評価試験に応用する取り組みを推進してきた。この取り組みにより確立された、ヒトiPS細胞由来心筋細胞による心毒性評価試験法は、致死性不整脈の発生リスクを高い精度で予測する次世代評価手法として期待されている。さらに、医薬品規制に関するガイドラインに本試験法を収載する動きも進んでいる。

今回、富士フイルムはFCDIのヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いて医薬品候補化合物の心毒性評価試験サービスを、富士フイルム和光純薬を通じて受託する。このサービスでは、富士フイルム和光純薬が試薬ビジネスなどで培った強固な国内販売網を生かして、企業や研究機関、アカデミアなど幅広い顧客にアクセスし、さらにFCDIのiPS細胞の知見・ノウハウなどをもとに顧客から預かった医薬品候補化合物の心毒性の発生リスクを高精度に予測し、その結果を顧客に迅速にフィードバックする。

今後、幅広い製品開発で蓄積してきた画像解析技術やAI技術により、心電図様波形(※3)の解析や、毒性メカニズムの予測技術の構築を図り、さらにそれらを応用することで、医薬品候補化合物の心毒性評価試験サービスの高度化を実現する。またiPS細胞を用いた、致死性不整脈以外の心毒性評価や心筋以外の毒性評価の試験サービスをラインアップに加え、多様化する創薬研究ニーズに応える。

※1 hERG(human ether−a−go−go−related gene)
チャネルに対して医薬品候補化合物の阻害作用を確認する試験。hERGチャネルは心臓に多く発現し、カリウムイオンを選択的に透過させるタンパク質で、心臓の細胞機能において重要な役割を果たしている。hERGチャネルが化合物に阻害されると、不整脈が起きる可能性が高くなる

※2 CSAHi
「ヒトiPS細胞由来分化心筋・肝臓・神経細胞を用いた各種安全性評価技術について、新規医薬品開発への応用可能性を実験的に検証し、将来的展望も含め実用に向け世の中に提言する」ことを目的とした組織。2021年2月3日現在、47の企業が加盟している
Consortium for Safety Assessment using Human iPS Cellsの略


※3 心電図様波形
電極上で培養したヒトiPS細胞由来心筋細胞に医薬品候補化合物を添加することで得られる電気的変化を記録した、心電図のような波形のこと。心毒性評価試験サービスでは、心電図様波形から医薬品化合物の心毒性を評価する

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:40| 流通