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2020年07月20日

【知 識】ダイキンと日立 生産・販売計画立案・実行支援ソリューション運用開始


ダイキン工業と日立製作所は、日立グループのSCM(※1)最適化シミュレーション技術(※2)を適用し、ダイキンの化学事業において需要変動に即応する最適な生産・販売計画の立案・実行支援ソリューションを実用化した。このソリューションはモノづくりプロセスの革新をめざした両社の協創から生まれた。複数の製造・販売拠点の需給バランスをもとに、利益、売上、キャッシュフローなどの重要業績指標(KPI)の最大化に向けて適正化した製造・販売施策シナリオや生産計画を自動で提示し、意思決定の迅速化に貢献するとともに、ウィズ・アフターコロナ時代の急激な需要変化にも対応する。

ダイキン工業はフッ素化学製品に関するグローバルの5カ所の製造拠点、9カ所の販売拠点、数百品目を対象に、2020年6月から同ソリューションの本格運用を開始した。これまでは、どの製品を、どの拠点でどれだけ生産し、どこで販売するかといった製造・販売施策を担当者が手作業により立案していたため、多くの時間を要していた。今回、同ソリューションを導入したことにより、従来の約60倍のパターン数を短時間に作成することができ、それらの定量的なシミュレーション結果に基づいて迅速な合意形成が図れるため、意思決定までに要する時間を約95%短縮できることを確認された(※3)。

製造業では、消費者ニーズの多様化や昨今の新型コロナウイルス感染拡大などにより、需要がダイナミックに変動しており、生産の遅延や欠品による機会損失、過剰生産などサプライチェーン全体でさまざまな課題を抱えている。

なかでも化学品は需要変動が激しく、かつ多品種生産を行うため、製造から販売まで部門間で調整を行い、状況に応じた製造・販売施策を複数パターン検討し、週単位や日単位で実行可能な生産計画を立案し、迅速にアクションに移すことが重要になる。その一方、世界中の製造・販売拠点について、販売価格や販売・生産量、設備稼働率、生産能力、関税など膨大なパラメータを販売先や製品ごとに考慮し、経営視点でKPIの最大化に向けた製造・販売施策や実行可能な生産計画を立案することは難しく、人手では膨大な時間と経験・ノウハウが必要とされる。

このような課題に対して、ダイキン工業と日立製作所は2018年9月から、ダイキン工業のフッ素ゴム『ダイエル(※4)』を対象に、モノづくりプロセスの革新をめざした新たなソリューションの創生・実用化に向けた協創を進めてきた。ダイキン工業が製造から販売を横断した現場の事業計画立案業務のノウハウとニーズを提供する一方で、日立製作所がLumada(※5)の協創アプローチ「NEXPERIENCE」を通じてそのニーズを施策パターンとして具現化し、そして日立ソリューションズが有するSCM最適化シミュレーション技術を適用して事業計画の立案・実行を支援するソリューションの実証実験を行った。

その結果、ボトルネック工程の設備稼働率と生産能力向上に伴う人員コストに着目した増産施策や、利益を最大にする調達・生産・販売経路の変更施策など、KPIに寄与する製造・販売施策や、現場制約が加味された実行可能な生産計画を、自動で複数パターン提示することが可能になった。これにより製造・販売施策のタイムリーな立案と迅速な意思決定が可能になるとともに、需給調整や施策立案に携わる担当者は顧客起点のSCM施策や事業計画の検討・実行に一層注力できるようになる。

ダイキン工業は、同ソリューションを活用することで、これまで需給調整担当者が膨大なデータを基に人手で立案していた製造・販売施策や生産計画について、世界中の顧客の要求納期に対応する施策・計画を、日単位でタイムリーに検討できるようになった。さらに新型コロナウイルス感染拡大による市場の急激な需要変動に対しても同ソリューションの有用性が確認できたことから、本格的な運用を開始した。


※1 SCM(Supply Chain Management)

※2 SCM最適化シミュレーション技術
日立ソリューションズが開発した数理最適化手法を活用し、最適な生産拠点や生産量、販売量、トータルコストなどをシミュレーションする技術

※3 ダイキン工業、日立製作所実証時の調査例。単位時間あたりのパターン創出数、需要が判明してから生産可否を判断する時間

※4 ダイエル
耐熱性、耐油性、耐薬品性に優れ、自動車や石油掘削、化学プラント他の過酷環境下でのシール材やホース材料として用いられるフッ素ゴム製品。ダイエルはダイキン工業株式会社の登録商標

※5 Lumada
顧客のデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立製作所の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:35| 知識