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2017年06月12日

【知 識】理研と大阪市立大 環境音楽聴取時の気分変化から自律神経機能を予測


理化学研究所(理研)ライフサイエンス技術基盤研究センター細胞機能評価研究チームの片岡洋祐チームリーダー、久米慧嗣研究員と健康・病態科学研究チームの渡邊恭良チームリーダー(大阪市立大学健康科学イノベーションセンター所長)、理研科学技術ハブ推進本部健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム新規計測開発チームの堀洋研究員らの共同研究グループは、環境音楽の聴取により主観的な疲労が軽減し、安心・リラックス感が増強すること、さらに、その際の自律神経機能指標の変化パターンが、疲労、癒し、眠気、憂鬱などの主観的気分の変化によって予測可能であることを明らかにした。

音楽を聴くことで、主観的な気分が改善され疲労感が減ること、また音楽のジャンルによってさまざまな感情や気分(例えば、気分が落ち着く、高揚するなど)が誘起されることが一般的に知られている。しかし、疲労科学的な観点からみると実際の疲労度と疲労感は一致しないことも多く、音楽聴取によって起こる主観的な気分変化が、疲労・疲労感の客観的な指標となる循環器系自律神経機能指標(心拍変動)とどのような関係性にあるのかはよく分かっていなかった。

今回、共同研究グループは、ピアノ、バイオリン、自然音源などから構成される環境音楽のアルバム楽曲を使用して、健常成人を対象に、環境音楽を30分間聴いたときと無音で過ごしたときの、主観的な気分と自律神経機能の変化について計測した。KOKOROスケールを用いて得た主観的気分データの解析結果から、環境音楽の聴取により、気分が「癒し」「眠気」「安心・リラックス感」の方向に大きく動くことが分かった。さらに、聴取前後での自律神経機能の変化と主観的な気分変化との相関を調べたところ、「癒し」や「安心・リラックス」への気分変化に対しては心拍数が減少すること、「爽快」への気分変化に対しては循環器系自律神経機能の指標であるLF/HF(心拍変動の低周波数成分(LF)と高周波数成分(HF)の比)が減少することが分かった。今回の結果は、音楽聴取時の主観的な気分変化を調べることで、個人の自律神経活動のバランスを予測し、そのバランスを調節するような楽曲制作・選曲がデザイン可能であることを示唆する。この成果は、スイスのオンライン科学雑誌『Frontiers in Neuroscience』(3月10日付け)に掲載された。

音楽が人々の主観的な気分にさまざまな影響を与えることは一般的に知られている。聴く音楽の種類により、安心・リラックスしたり、眠たくなったり、あるいは興奮したり、モチベーションが増したり、悲しくなったりと、異なる気分や感情が誘起される。これら気分の変化は、生理学的な観点から自律神経機能の変化との関係が推測されているが、聴取する音楽のジャンルによって反応性が全く異なるため、まだ科学的なコンセンサスはない。

日常的な疲労は、慢性的、肉体的、精神的、またはその複合型の疲労などさまざまであり、これらの疲労状態(あるいは、実際の疲労度の度合い)は、主観的な疲労感と一致しない場合もしばしばある。そのため、音楽を聴くことで、主観的な気分が改善され、自覚的な疲労感が減ることも報告されている。しかし、客観的な疲労・疲労感の指標と主観的な気分変化との関係性はよく分かっていなかった。

近年、心拍変動解析によって得られる低周波数成分(LF)、高周波数成分(HF)、およびその比(LF/HF)といった循環器系自律神経機能の指標が、精神的な疲労や日常生活での疲労の程度の客観的な指標となることが報告されている。そこで共同研究グループは、音楽聴取時において、これらの自律神経機能指標の変化パターンと主観的な気分変化を同時に計測し、その関係性を詳細に調べることを試みた。

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投稿者:gotsuat 09:40| 知識