<< 前のエントリ合通ロジのトップページへ
2016年09月16日

【物 流】JETRO 船会社の経営破たんによる各当事者の責任範囲と対処方法を公表


日本貿易振興機構(以下、JETRO)は、平成28(2016)年9月12日、船会社の経営破綻による各当事者の責任範囲と対処方法について公表した。

事例として、貨物が積まれた船舶が運航中、その船舶の船会社が経営破綻をし、債権者の差し押さえや港への入港拒否、荷役作業の拒否などにより、船が洋上で立往生していることを挙げている。その際の対処方法として、JETROは、国際ルールなどから一般的な考え方を以下の通りにまとめた。

1.売主と買主の責任範囲
平成22(2010)年版インコタームズ規則では、11種類の取引条件において売主と買主のリスクの移転時点を定めている。リスクの移転時点とは、貨物の損害に対する責任が売主から買主に切り替わる時点を指す。
在来船用の本船渡し(FOB)、運賃込み(CFR)、運賃保険料込み(CIF)はいずれも本船の船上に置いた時点でリスクが売主から買主に移転する。コンテナ船、航空機等で用いるべき運送人渡し(FCA)、輸送費込み(CPT)、輸送品保険料込み(CIP)は、運送人に貨物を引き渡した時、リスクが売主から買主に移転する。これらのうち、CFR、CIF、CPT、CIPの4つの規則については、いずれも売主が指定仕向地へ物品を運ぶために必要な運送契約を締結するものの、物品が仕向地に到着した時ではなく売主が運送人に引き渡した時、売主は引き渡しの義務を果す。CFR、CIF、CPT、CIPの4つの規則については、リスクの移転と費用負担者の変更が異なる場所で起こることに注意が必要である。

2. 貨物海上保険の適用に関して
外航貨物海上保険において現在主流となっている平成21(2009)年改定協会約款(ICC)では、ICC(A)<1963年協会約款の全危険担保に相当>を付保した場合は、船会社の倒産により保険証券記載の仕向地以外の場所で運送契約が打ち切られ、その結果として本来の仕向地までの継続費用が発生した場合には保険金の支払いの対象となる。ただし、当該倒産情報を被保険者が知っていたか、または通常業務において知っているべきであった場合は対象外となる。また、輸送の遅延についても保険の免責事項となっており、船会社の倒産で輸送の遅延が生じ、当該遅延によって貨物に損害があったとしても保険金の対象とはならない。実際に保険金が支払われるかどうかは保険契約の内容や状況に応じ個別の対応となるため、貨物海上保険を契約している保険会社に個別に問い合わせが必要である。

JETROはそのほか、洋上で立往生している船舶からの貨物の引き取りについて、利用運送事業者や非船舶運航業者との契約である場合にもフォワーダー、NVOCCなどに確認するように勧めている。

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:45| 国際物流