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2016年08月03日

【流 通】東京工科大学 がんを簡単に調べられる新しいメチル化DNAの測定法を開発


東京工科大学応用生物学部の吉田亘助教、軽部征夫教授らの研究グループ(※1)は、がんなどのバイオマーカーとして期待されるメチル化DNAを簡便に測定できる方法の開発に成功した(※2)。同研究成果は、2016年6月28日に科学誌「Analytical Chemistry」オンライン版に掲載された(※3)。

ヒトゲノム中の塩基シトシン(※4)のメチル化は、遺伝子の発現を制御する「遺伝子スイッチ」としての働きを持っており、がん細胞ではこの遺伝子スイッチが異常になっていることが確認されている。このスイッチの異常、すなわちがん関連遺伝子のメチル化頻度は、がんのバイオマーカーとして期待されている。同研究では、従来は煩雑な操作が必要であったDNAメチル化頻度の測定を簡便に行える方法を開発することを目的とした。

通常、DNAは二重らせん構造を形成するが、特定の配列を持つDNAは四重鎖構造を形成する。同研究では、四重鎖DNAがメチル化されると、それをPCRで増幅させた場合、PCR増幅効率が減少することを発見した。実際にヒトゲノムを対象とし、がん関連遺伝子であるVEGF−A(※5)中の四重鎖領域の増幅効率を、リアルタイムPCR法(※6)により測定した結果、メチル化頻度に依存して減少することがわかった。すなわち、この方法で標的がん関連遺伝子のメチル化頻度を簡便に測定できる。

従来よりも簡便にがん関連遺伝子のメチル化頻度を測定できるため、がんの簡易診断への応用が期待される。また、DNAメチル化の異常はがんだけでなく生活習慣病やうつ病の発症にも関連しているため、それら疾患の簡易診断への応用も期待される。

※1 東京農工大学大学院池袋一典教授、同長澤和夫教授、埼玉大学大学院飯田圭介博士、Umm Al−Qura University(サウジアラビア)との共同研究

※2 同研究は日本学術振興会(JSPS)科研費15K18278の助成を受けている

※3 論文名「Detection of DNA Methylation of G−Quadruplex and i−Motif−Forming Sequences by Measuring the Initial Elongation Efficiency of Polymerase Chain Reaction」,DOI:10.1021/acs.analchem.6b00982

※4 シトシン
DNAを構成する4種類(アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C))の塩基の1つであり、主にCG配列中のCがメチル化される

※5 VEGF−A(Vascular Endothelial Growth Factor A)
血管内皮細胞増殖因子をコードする遺伝子であり、管新生に関連している

※6 リアルタイムPCR法:ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)によって、特定のDNA断片を増幅し、リアルタイムにDNA量を測定する方法

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投稿者:gotsuat 09:40| 流通