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2016年07月25日

【流 通】防爆性能を備えた遠隔操縦式移動ロボットを国内で初めて開発


三菱重工業と千葉工業大学は、引火性ガスの中でも自らが出す電気火花や熱などで爆発や火災を引き起こす危険性を大幅に抑える防爆性能を備えた遠隔操縦式の移動ロボット「桜II号(防爆仕様)」を共同開発した。日本国内の防爆認証(型式検定)を取得し、無線または有線による遠隔操作が可能な移動ロボットで正規の防爆性能を持つものは国内で初めて。トンネル内事故や石油化学プラントなど、防爆対応が求められる現場での安全かつ高効率な情報収集・点検や軽作業に向けた用途・需要を開拓する。

桜II号(防爆仕様)は、千葉工業大学が開発した、原子力発電プラント事故収束支援活動などで実績のあるロボット「櫻弐號(サクラニゴウ)」をベースに、三菱重工業が幅広い産業分野向けで培った技術的総合力を活用して高い防爆性能を実現した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」(※1)による委託・助成を受けており、国内では産業安全技術協会(TIIS)による防爆型式検定に合格した。さらに、欧州など世界で広く採用されているATEX指令に基づいた防爆認証も取得を予定している。

防爆の構造は、リチウムイオン電池やBMS(バッテリーマネジメントシステム)などを収納した耐圧防爆容器を、モーターやコントローラーなどの電気機器とともに、外部より高圧雰囲気の内圧容器で包み込んだ、内圧+耐圧防爆の二重方式で、外部の引火性ガスが圧力差により内圧容器に浸透せず、たとえ内圧容器破損などで内圧が下がっても検知により電気供給を遮断する。電気を蓄積している電池は、IDECと共同開発した耐圧防爆容器で保護されているため、電気火花や熱などがガスに引火する危険性は大幅に抑制される。引火性と拡散性がともに高い水素ガスにも対応し、ゾーン1危険場所(※2)でも使える高い防爆性能を実現した。

防爆移動ロボットの活躍が期待される現場は、掘削中のメタンガス噴出や,運用中の自動車の燃料漏れなどにより引火・爆発の危険性があるトンネル事故などのほか、多数存在する。高度成長期以降に整備された社会インフラや、石油精製プラント、化学プラントや発電所などの産業インフラは、多くが今後老朽化の加速により、人命や社会にダメージを及ぼすリスクが増大していき、災害時の緊急点検や迅速な復旧、災害の未然防止や拡大抑止に向けて、ロボットによる異常探索や軽作業に対するニーズが高まっている。また、新しい油田設備や石油・化学関連施設でも、ロボットの活用により人が踏み込みにくい高所や狭隘空間の点検などを低コスト・高精度化していこうという動きが出てきた。

三菱重工業と千葉工業大学は、今回の桜II号(防爆仕様)開発を機に各方面でのニーズ喚起に取り組むとともに、今後は防爆性能を備えたロボットアームの開発や、ロボットの自動走行化などに取り組み、さらなる用途拡大と潜在ニーズの掘り起こしに注力する。


※1 研究開発テーマである「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト/インフラ維持管理用ロボット技術・非破壊検査装置開発/引火性ガス雰囲気内探査ロボットの研究開発」は4年間の計画で、2014〜2015年度が委託事業、2016〜2017年度が助成事業となっている

※2 危険場所3区分の2番目:通常で危険性雰囲気を発生する恐れがある場所のことで、オイルタンク内部(ゾーン0)以外のほとんどの危険場所があてはまる

※3 パン(左右動)・チルト(上下動)・ズーム(望遠から広角)が可能なPTZカメラは、宮木電機製作所の協力により組み込むことに成功した。

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:40| 流通