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2014年06月26日

【流通】東京工科大学 乳酸菌を用いて“浅漬け”による食中毒を防ぐ手法の発見

東京工科大学応用生物学部の西野智彦准教授らの研究チームは、ある種の乳酸菌を用いることで、「浅漬け」による食中毒を防ぐ効果があることを発見した。

浅漬けは、短期間の漬け込みで手軽に製造する漬物であり、古漬けと分類される一般の漬け物と比較して微生物による発酵の関与は少ないとされている。また、塩分濃度が2.0〜2.5%と低塩分であることから、近年の減塩志向も手伝って高塩分条件で製造される古漬けに比べ好まれて食されてる。しかし、その低塩分が原因となって漬物では珍しい食中毒事例が報告されており、現在、日本の漬物の衛生規範では塩素消毒が推奨されている。
西村准教授らの研究では、浅漬けの漬け込み時に乳酸菌を加えて増殖させることで、食中毒を起こす可能性のある雑菌の増殖を防ぐ効果について検証を行った。

発酵させる際に使用する乳酸菌として、食経験があるとされる植物性乳酸菌の基準株を菌株保存施設から得て検討したが、大腸菌増殖抑制効果は芳しいものではなかった。そこで、市販漬物から浅漬け製造に適した乳酸菌を選び出したところ、大根キムチから大腸菌増殖抑制効果が高い菌株が分離された。この菌株は16SrRNA遺伝子の塩基配列解析により、ロイコノストック・シトレウム(Leuconostoc citreum)である可能性が高いことが分かった。この大腸菌増殖抑制効果は、乳酸菌の酸生成速度が速いことにより、漬け物が短期間で低pHになることが主な原因と考えられる。また、浅漬け中の本乳酸菌株はヒトの消化管ストレスを模倣した人工胃液・胆汁連続処理に耐えられたことから、ヒトの大腸に生きた状態で届くと予想され、プロバイオティクス(※1)としても有用であると考えられる。官能評価を行った結果、乳酸菌が増殖しても浅漬けの風味を劣化させないことも判明した
。これらの結果から、これまで微生物の関与が薄いとされてきた浅漬け製造において乳酸菌発酵を行なわせることで、より安全性の高い浅漬けを製造できる可能性を示すことができた。

今回、得られた菌株を凍結乾燥などにより粉末化して、家庭で浅漬けを作るときに加えることで、浅漬けをより安全に製造できると期待される。今後、商品化に向けての検討を予定している。

※ 腸内フローラ
腸内菌叢のバランスを改善することにより、人に有益な作用をもたらす生きた微生物

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投稿者:gotsuat 09:58| 流通