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2012年02月20日

【流通】田中貴金属と九大 従来の6倍の深さまで成膜可能なルテニウム材料を共同開発

田中貴金属工業は、九州大学大学院工学研究院応用化学部門の小江誠司(おごう せいじ)教授と共同で、半導体メモリーのDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)に使われるキャパシタ電極を、従来の6倍の深さまで成膜可能なルテニウム材料の開発に世界で初めて成功した。次世代DRAMの微細化技術に用いられるMOCVD(有機金属化学着気相蒸着法)の本格導入に合わせて、2012年内に製品化することを目指す。

このルテニウム材料は、回路線幅20ナノ(ナノは10億分の1)メートル以降の次世代DRAMに使われるMOCVDの成膜材料(プリカーサ)で、40対1という高いアスペクト比(細孔の深さと開口直径の比)の細孔内部に均一なルテニウム薄膜を形成することができる(※)。これにより、従来の6倍の深さまでキャパシタ電極を製造することが可能になる。半導体メーカー各社は、20ナノメートル台の次世代半導体を2012年中に量産化すると考えられており、このルテニウムプリカーサを使うことで、20ナノメートル世代以降の微細化に対応できるキャパシタ電極を製造することができる。

半導体メモリーの大容量化に伴い、半導体メーカー各社は次世代DRAMでの微細化に対応するために、メモリーセルを深く彫り込みキャパシタ電極を立体構造にする製造方法を採用する予定で、立体電極の作製方法としてMOCVDの採用が期待されている。しかし、従来のMOCVD用ルテニウムプリカーサでは、電極薄膜を形成できる細孔のアスペクト比が最大で6対1であり、20ナノメートル世代以降で必要とされる高アスペクト比のキャパシタ電極を製造できない点が、技術的な課題となっている。

MOCVDの成膜原料には、通常の金属よりも蒸発しやすい有機金属錯体が用いられる。田中貴金属工業がこのたび世界で初めて開発に成功したルテニウムプリカーサは、有機化合物(シクオロオクタテトラエンとカルボニル)と金属元素(ルテニウム)から成る有機金属錯体で、蒸気圧が高く(成膜の際に蒸発しやすく)、加熱により容易に金属を析出しやすい性質を持つため、40対1という高いアスペクト比を持つ細孔内部に、被覆率70%のルテニウム薄膜を165℃という低温で形成することができる。

※ 深さ10マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル、開口直径250ナノメートルの細孔の場合

※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:40| 流通