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2012年02月15日

【知識】理研と埼玉大学 他 「技術研究組合」を設立

理化学研究所(理研)と埼玉大学は、黒金化成、FLOX、VCADソリューソンズら5社と共同で、「新世代塗布型電子デバイス技術研究組合」を設立。理研や埼玉大学が保有する有機エレクトロニクスに関する研究成果の早期実用化を目指して、理研和光研究所内に初めて技術研究組合を設立した。

技術研究組合とは、産業活動で利用される技術の向上及び実用化を図るため、これに関する試験研究を協同で行うことを目的とした技術研究組合法(昭和36年5月6日法律第81号)に基づき設立する組織で、理事長には理研社会知創成事業有機光電子工学研究チームの田島右副チームリーダーが就任した。

この組合では、ナノサイズの構造体が形成可能で、しかも低コストで製造できる静電塗布法(※1)を利用して、薄膜形成技術の研究開発を行う。また、資源循環型材料として期待される有機半導体を利用して、薄膜太陽電池に向けた新規有機材料の製造方法開発にも取り組む。これらの技術により、製造エネルギーを大幅に低減し、水性有機半導体コロイド(※2)などを用いた環境負荷の小さい有機薄膜太陽電池など、新世代塗布型電子デバイスの開発へ貢献する。

安価な製造コストと少ないエネルギーで製造できる塗布型電子デバイスは、さまざまな新世代電子デバイスに応用できる可能性がある。中でも、室内光など弱い光でも高い発電効率を発揮する有機薄膜太陽電池は、新たなエネルギー供給デバイスとして世界中の期待が高まっている。真空蒸着法や化学気相成長法でシリコンを製膜した従来の薄膜太陽電池では、10%以上の高い発電効率が得られるものの、製造エネルギーや製造コストの低減が難しいといった課題を抱えていた。一方、有機半導体材料を用いた塗布法による製膜では、大幅な製造エネルギーの低減が期待できるが、発電効率向上と長寿命化のための課題が未解決であり、早期の実用化達成が困難だった。そのため、基礎研究機関と民間企業が保有する知見や技術、ノウハウを持ち寄って相互補完し、それらを取りまとめて成果を出していく組織が求められていた。

技術研究組合は、産業活動で利用される技術に関して、各機関・企業(組合員)が自らのために共同研究を行う相互扶助組織(非営利共益法人)で、各組合員は、研究者、研究費、設備などを出し合って共同研究を行い、その成果を共同で管理し、組合員相互で活用する。2009年に技術研究組合法が改正され、組合員の資格が明確になったため、基礎研究に関する知見を保有する大学や公的研究機関が加入しやすくなった。そこで、理研と埼玉大学が中心となって、独自の重要な要素技術を有する他5社の企業と共同で技術研究組合を設立することに合意した。製造エネルギーと環境負荷の低い有機薄膜太陽電池の製造技術の開発を行い、2013年中にプロトタイプを完成、2015年の実用化を目指す。

※1 静電塗布法
サンプル試料を充填したガラスキャピラリーに電圧を印加すると、アースに接続した基板との電位差により、キャピラリー先端から正荷電した微細な液滴が電場に沿って基板へ運ばれ、基板上の導電体に積層される。2011年埼玉大学は、静電塗布法で成膜した有機薄膜太陽電池がスピンコート法に匹敵する性能を示すことを報告した。理研は、スピンコート法では不可能だった粘度の極めて低い水系コロイドなどの薄膜作製に静電塗布法を利用する研究を行っている

※2 水性有機半導体コロイド
導電性高分子やフラーレン誘導体などの有機半導体材料をナノ粒子化し、水中に分散させると得られるコロイド溶液。静電塗布法で成膜することで高性能な半導体薄膜が得られるうえ、有害な溶媒を使用しないため製造時の安全性を改善できる

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※ 製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です

投稿者:gotsuat 09:35| 知識